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アクティビストが上場廃止に追い込む「PBR1倍割れ」企業…ぬるま湯経営大国の日本!

 日本の株式市場の後進性を示す現象の一つに、上場企業の半数以上がPBR(株価純資産倍率)1倍を切っているという事実がある。アメリカのS&P500銘柄では(1倍割れの企業は)3%に過ぎないのだから、特殊性が分かろうというもの。だが、昨年4月に始動した市場再編を機に、東証では本気でこの「PBR 1倍問題」を解決しようとしている。そしてカギを握るのが「物言う株主」、アクティビストの存在だ。

2023年の株式相場を左右する「PBR 1倍割れ問題」

 2023年が始まって2カ月余り。今年の株式相場を大きく方向づけそうな言葉が浮上してきた。「PBR(株価純資産倍率)1倍割れ」だ。株価が帳簿上の株主持ち分である1株純資産を下回る状態であり、極端に市場評価が低いことを意味する。日本はPBR 1倍割れ企業の多さで有名だったが、企業の危機感は必ずしも強いとは言えなかった。東京証券取引所は1部、2部、マザーズ、ジャスダックの市場区分をプライム、スタンダード、グロースに再編したことに伴い、PBR 1倍割れ企業に改善策を促すことを決めた。

 あくまで働きかけなのだが、まじめな企業ほどこの種の数値基準にからんだ議論に過剰反応する。物言う株主(アクティビスト)のうごめきも目立ってきた。常に新しい売買の手がかりを探す証券会社は「PBR相場」をはやすのだろうが、持ち上げられては捨てられてきた過去の相場テーマと同列に扱うのは、あまりに惜しい。少し整理して考えてみよう。

 ことの発端は東証が市場再編に伴い、2022年7月に設置した「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」だ。「市場区分見直しの実効性向上に向けて、施策の進捗状況や投資家の評価などを継続的にフォローアップし、上場会社の企業価値向上に向けた取り組みや経過措置の取り扱い、ベンチャー企業への資金供給などに関する追加的な対応について東京証券取引所に対して助言を行う」ことを目的とした。

 メンバーの顔ぶれ(肩書は当時)は、安藤聡・オムロン取締役、翁百合・日本総合研究所理事長、神田秀樹・学習院大学大学院法務研究科教授、熊谷亮丸・大和総研副理事長、黒沼悦郎・早稲田大学大学院法務研究科教授、小池広靖・野村アセットマネジメント最高経営責任者(CEO)、三瓶裕喜・アストナリング・アドバイザー代表、永見世央・ラクスル最高財務責任者(CFO)、松本大・マネックスグループCEOとなっており、研究会や審議会の定番メンバーだけでなく、うるさ型の論客も交じっていた。

「市場が株主の権利を守れば、PBR 0.5倍企業はあり得ない」松本大…東証にも「上場廃止やむなし」の声

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この記事の著者
小平龍四郎

1964年生まれ。静岡県出身。早稲田大学第一文学部卒業。日本経済新聞入社後は主に金融・証券畑を歩き、「山一証券破綻」「村上ファンド登場」などの特報にかかわる。欧州総局(ロンドン)やアジア総局(バンコク)を経験し、現在は日経新聞の上級論説委員兼編集委員。専門は証券市場、ESG/SDGs、企業統治。著書は「グローバルコーポレートガバナンス」「アジア資本主義」「ESGはやわかり」。 Twitter:@Kodaira_Nikkei

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