年末「日経平均8万円」はAI株抜きで達成? 10億円投資家が予測する“大ローテーション”と次に化けるセクター

本稿で紹介している個別銘柄:トヨタ自動車(7203)、キヤノン(7751)、第一三共(4568)
日経平均株価が激しく乱高下するなか、これまで相場を牽引してきたAI・半導体関連株に異変が起きている。株価下落を「絶好の押し目」と捉え、再び買い向かう投資家も少なくない。
しかし、独自の投資手法で資産10億円を築いた株億太郎氏は、「PBR50倍を超える銘柄まで現れた今のブームは、過去のバブル崩壊直前とよく似ている」と話す。
では、AI株から逃げ出した巨額のマネーは、次にどこへ向かうのか。株億太郎氏が予測するのは、インフレと地政学リスクをきっかけとする大規模なセクターローテーションだ。
意外にも、AI株が崩れた後も日経平均は上昇し、年末には「8万円」に届く可能性があるという。その強気シナリオの根拠と、今から仕込むべき“次の本命セクター”を聞いた。インタビュー連載全3回の最終回。
AIは伸びても株価は別…PBR50倍の異常事態
ーー足元の市場では、個人の参加者が急激に増えました。信用取引を活用して資産を一気に増やし、「億り人」になったとの声もSNSで見かけますが、こうした状況をどのように見ていますか。
確かに、日経平均が数万円単位で上昇していく過程で、資産を大きく増やした個人投資家は急増しました。1000万円の元手に信用取引のレバレッジをかけて、1億5000万円まで増やした人もいるでしょう。
しかし、ここ最近の乱高下で、そうした「信用億り人」たちの多くが深刻な状態になっていて。証券会社に話を聞くと、なんとか強制ロスカットまでは行かずとも、追証の手配に追われてギリギリで生き残っている人が大勢いるそうです。
根拠なきブームに乗って実力以上のリスクを取った結果が、今の惨状を招いています…。
ーーとはいえ、AIや半導体は今後の社会インフラになります。足元の調整は健全なガス抜きであり、将来の成長を考えれば、今の株価でもまだまだ安いと考える投資家も少なくないようです。
2027年や2028年頃まで、データセンターの建設を含めたAI・半導体関連の需要が活況を呈することは間違いないでしょう。
各企業が強気な値上げを行い、私たちの想像を絶するような売上や利益を叩き出す可能性は十分にあります。
ただ、事業の成長と、現在の株価が正当化されるかは別問題です。率直に言って、AI関連銘柄のバリュエーションは異常な水準まで買われすぎています。
例えば、ある記憶装置関連の銘柄は、株価がPBR50倍に達しました。実に2兆円規模の企業が、これほどの異常値で取引されている。どう見ても狂っています。
今はまだ「次も上がるはずだ」との余韻が残っていますが、いずれ大きな調整がくるでしょう。
7000万円が数百円に?AI株にも迫るバブルの末路
ーー過去の株式相場を振り返っても、ここまで特定のセクターに資金が集中するブームは珍しいのでしょうか。
私が長年相場を見てきた中で、大きなバブルは何度かありました。1980年代の抗がん剤を中心としたバイオブーム、2000年代初頭のITバブル、そしてiPS細胞の発明などを契機とした二度目のバイオブームです。
特にITバブルの時は凄まじかった。インターネット総合研究所が公募価格5万円で上場し、初値で7000万円をつけました。しかしブームが去った後、株価は数百円にまで落ち込み、最終的には上場廃止となっています。
当時の空気と今のAIバブルは、非常に似通っていて。市場参加者が爆発的に増え、誰もが「AIに乗れば間違いない」と盲信しています。過去の歴史が証明している通り、全員が同じ方向を向き始めた時が一番危険なのです。
ーー技術自体は本物であっても、株価が危ういと。他にAI関連株の具体的なリスクはありますか。
過剰生産と技術の進化スピードです。現在、米国、中国、韓国などで、莫大な予算を投じた巨大な半導体工場が一斉に建設されています。これらが稼働すれば、どこかのタイミングで必ず供給過多に陥ります。
さらに恐ろしいのはテクノロジー自体の進化です。もし、今まで1分かかっていたAIの処理や半導体素材の製造が、新しい技術によって1秒で完了するようになったらどうなるか。現在ある莫大な設備投資の価値が、一瞬にして陳腐化し、ゼロになるリスクを秘めています。
投資家は夢を見て高値を追っていますが、現場の進化スピードははるかに速く、株価が追いつけなくなる局面が来るはずです。
原油200ドルでAI株が沈む…本命は資源・食料
ーー世界各国の中央銀行はインフレを警戒し、金利操作で経済をコントロールしようとしています。金利が上がれば株式市場から資金が抜け、全体的に株価が下落するのではと懸念する声も根強くあります。
インフレを中央銀行の政策だけでコントロールするのは不可能です。
歴史を振り返っても、インフレやデフレを政府や中央銀行が完全に抑え込んだ例はありません。日本が30年間デフレから抜け出せなかったのがよい証拠です。
特に今は、地政学的な問題がインフレをさらに加速させています。中東情勢は一向に落ち着かず、ホルムズ海峡や紅海周辺での緊張が高まっています。
もしこれらの海上交通路が完全に封鎖されれば、原油価格は1バレル150ドル、あるいは200ドルまで跳ね上がるかもしれません。
AIのデータセンターは大量の電力を消費するため、その多くが電気代の安い中東に建設されています。原油高と中東の不安定化が同時に進めば、AI産業の根幹すら揺らぎかねません。
ーー金利政策がインフレを止められないとなれば、世界中を巡っている投資マネーはどこへ向かうのでしょうか。
さらに深刻な問題として、各国の財政赤字が限界に達しつつあります。米国の債務残高は公表されているだけでも数十兆ドル規模に上り、金利が上昇する中で利払いを続ける体力がどこまで持つか、大きな疑問符が付きます。
いずれ、ドルや円など法定通貨への信認が揺らぐ日がくるでしょう。その時、逃げ場を失ったマネーはどうなるのか。私は、通貨よりも実体経済に根ざした「株式」が、価値の保存手段として大量に買われるシナリオを想定しています。
ただし、買われるのはこれまで持て囃されてきたAI株ではありません。
人間が生きていく上で絶対に欠かせない「資源・エネルギー・食料」の分野です。ここから数年のスパンで、非常に大掛かりなセクターローテーションが起こると見ています。