「うちは大丈夫」が一番危ない?普通の家庭で起きる実家相続の落とし穴
「相続の対策なんて、一部の大地主や大金持ちがやることだ。うちには大した財産なんてないから関係ない」——そう安心しきって、何の準備もしていないごく普通の一般家庭こそが、実は最も深刻な「取り返しのつかない相続トラブル」に巻き込まれている。
今回、相続について話してくれたのは「小さな相続専門税理士」としてYouTubeなどで情報発信を続けている、税理士のきむらあきらこ氏だ。一般的な税理士が会社の顧問契約や確定申告をメインとする中で、きむら氏はあえて「自宅と少額の金融資産だけ」という庶民層の相続税申告・生前対策に特化した領域で活動している。人生で一度か二度しか直面しない相続に途方に暮れる人々の相談とは、一体どのようなことなのだろうか。
本稿では、税理士との付き合いが一度もない元サラリーマンや元公務員のご家庭が、なぜ相続で対応に行き詰ってしまうのか、その意外な落とし穴と今すぐ知っておくべき実家相続のリスクについて同氏が徹底解説。全3回の第1回。
みんかぶプレミアム連載「取り返しのつかない相続」
「うちは庶民だから関係ない」という思い込みが一番危険
相続で苦労しそう……とイメージするのは、資産何億円という富裕層や地主といったお金持ちの方々だと思いますが、富裕層や不動産を多く所有する方は、比較的早い段階から税理士や弁護士などの専門家に相談しているケースがあります。一方、一般のご家庭では「自分たちには関係がない」と考え、準備をしないまま相続を迎えることが少なくありません。
そして相続に直面して本当に困っているのは、今まで相続のことなど考えたことのない、むしろごく普通のご家庭なのです。
2015年の相続税法改正により、基礎控除が大幅に引き下げられました。それまでは「5,000万円 + 1,000万円 × 法定相続人の数」だった非課税枠が、「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」へと一気に縮小されたのです。(参考:国税庁│相続税)
例えば、残されたご家族が妻とお子さん2人の計3人の場合、改正前は非課税枠が8,000万円だったのが、今は、亡くなった方の遺産額が4,800万円を超えると相続税の申告が必要になります。
「自宅と少額の金融資産だけが資産」の庶民でも、都内近郊に一軒家やマンションを持っていれば、それだけで土地の評価額が上がってしまいます。そして4,800万円を超えてしまう家庭が増え、相続税申告の対象になってしまう時代になりました。
基礎控除が大幅に引き下げられたことを知らずに、過去のイメージのまま「昔、親戚から『うちは相続税なんてかからない』と聞いたから大丈夫」と放置していると、亡くなった後に焦ることになります。