新NISA制度に改悪点はある?ロールオーバーが出来ないなど気になるデメリットの真相と対処法を合わせて解説 みんかぶ編集室 2023.11.22 (2023.10.13公開) 新NISA 2024年1月から開始される「新NISA制度」。投資上限額の増加や、開設期間の恒久化、非課税期間の延長(無期限に)など一見「改善点」ばかりが多そうな新NISA制度ですが、本当に改善点しかないのでしょうか? TwitterなどのSNSや、google検索で調べていると「新NISA制度 改悪・メリットない」などネガティブな意見も目にする機会があると思います。 そこでこの記事では、新NISA制度に改悪点はあるのか、そして改悪点がある場合どう対処すれば良いのかを「わかりやすく・中立の立場」で解説します。 この記事のざっくり要約も以下に載せておくので、あわせてチェックしてみてください! 【新NISAの改悪点まとめ】 18歳以上を対象と考えた場合にはほとんど改悪点はなく、NISA口座からロールオーバーできない問題も「一度現金化」すれば問題なし。 未成年(自分のこども)が利用できるNISA制度が無くなる点は改悪ポイントのひとつ。学費等ではなく「資産」をそのままあげたいと考えている親御さんは注意。 目次新NISA制度に改悪点は存在しない?それとも改悪されたポイントがある?新NISAの改悪点の対処法をわかりやすく紹介!新NISA制度を利用するデメリットはある?それともない?新NISA制度は大きな改悪点・デメリットはほとんどないが注意点は存在する新NISAで後悔しないために賢く使って資産形成を進めよう! 新NISA制度に改悪点は存在しない?それとも改悪されたポイントがある? 新NISA制度に改悪点は少ないながらもあります。ただ、新NISA制度で拡張されたメリットを帳消しにしてしまうような「致命的な改悪点」はありません。 ですから、新NISA制度に興味を持っている投資初心者の方は「どうすれば改悪点をうまく対処できるか」を考えることが重要です。 もちろん、記事内でも「改悪点の対処法」を紹介しているのでお役立てください。 では、具体的な改悪点は以下の3つです。ただし、最後の一つに関しては「改悪点として誤解されやすいポイント」という意味合いで掲載しています。 ジュニアNISAが廃止されるから未成年の資産形成がしづらくなる? 一般NISAと成長投資枠を比較すると投資先が「若干」制限されている 新NISA制度ではロールオーバーが不可になるって本当? 【新NISA制度の概要・変更点】 現行NISA制度(つみたてNISA/一般NISA) 新NISA制度(つみたて投資枠/成長投資枠) 年間投資上限額 40万円/120万円 360万円(120万円/240万円) 非課税期間 20年/5年 無期限 非課税投資枠 800万円/600万円 1800万円(成長投資枠の上限は1200万円) 口座開設可能期間 2023年まで 恒久化 開設可能年齢 18歳以上 18歳以上 売却後の枠の復活 なし 簿価残高方式で管理され、売却分の買値(買い付けた金額)が復活する ジュニアNISAが廃止されるから未成年の資産形成がしづらくなる? 新NISA制度の開始と同時に「ジュニアNISA」が廃止されます。ジュニアNISAとは、以下の特徴を持つ「未成年者向けの非課税投資制度」のことです。 ジュニアNISAのメリット 配当金や譲渡益が非課税 年間80万円の非課税投資枠 非課税期間は5年間 親権者が資産管理できる ジュニアNISAのデメリット 2024年以降はいつでも引き出せるものの「全額引き出し」しかできない 金融商品の種類が限られている 贈与税の対象になる では、このジュニアNISAの廃止がなぜ「改悪点」といえるのでしょうか。その理由は「自分の子供(18歳以下)」のための資産形成がしづらくなってしまうからです。 新NISAはジュニアNISAとは異なり「18歳以下」は口座開設ができません。 そのため、ジュニアNISAの廃止をカバーするためには、両親の新NISA口座の投資枠や学資保険を活用する必要が生まれます。 未成年のお子さんがいて、ジュニアNISAを活用しようと思っていた/していた「親御さん」にとって、このジュニアNISAの廃止は「改悪点」と言わざるを得ないでしょう。 一般NISAと成長投資枠を比較すると投資先が「若干」制限されている 1つ目の改悪点はかなり「重め」でしたが、ここからは「軽め」の改悪点なのでサクサク読み進めてもらえればOKです。 一般NISAでは「国内株式・投資信託・外国株式」が投資対象でした、しかし新NISAの「成長投資枠(一般NISAの特徴を引き継いだ投資枠)」では、投資対象が以下のように制限されています。 【投資対象】 上場株式(国内株式・外国株式)・投資信託等 ※1整理・監視銘柄は除外 ※2信託期間20年未満・毎月分配型の投資信託及びデリバティブ取引を用いた一定の投資信託を除外 つまり、新NISA制度では「リスクが高く、長期運用には不向きであることが明白な金融商品」が投資対処から除外されているということです。 悪く言えば「投資先が若干制限される=改悪」とも言えますが、どちらかというと「リスクの高い投資先が除外されている=改良」という意味合いが強いように思えます。 特に、これから投資を始める「投資初心者」にとっては、間違いなく「プラス」に働きますね。 新NISA制度ではロールオーバーが不可になるって本当? 結論、新NISA制度ではロールオーバーは不可になります。 しかし、デメリットはありません。なぜなら、ロールオーバーは「非課税期間が制限されている場合にのみメリットがある」制度だからです。 ロールオーバーとは、非課税期間が切れる資産を「翌年の非課税枠」と使うことで、さらに5年非課税期間を伸ばせる&上限投資枠以上の評価額でもOK!という恩恵が得られる制度のことです。 ここで新NISAの非課税期間を考えてみましょう…「無期限」ですよね?つまり、ずっと非課税ならロールオーバーをする必要性が全くないのです。 ですから、新NISA制度でロールオーバーが不可になるのは事実ですが、改悪点ではないと結論づけられます。 新NISAの改悪点の対処法をわかりやすく紹介! では、これまでに紹介した2つの改悪点の対処法を「初心者の方が読んでも理解しやすいよう」に解説します。 ただ、ジュニアNISA廃止の対処法に関しては、どうしても話が少し複雑になってしまうため「ゆっくり丁寧に」読み進めていただければ幸いです。 ジュニアNISA廃止は年間投資上限額の拡大でカバーしよう! ジュニアNISA廃止は「子供(18歳以下)」へ学費やライフイベントに充てるための資金形成をしづらくなるというデメリットがあります。 しかし、うまく新NISA制度を活用すればこのデメリットはカバーできるのです。 まずは、ジュニアNISAの年間上限投資額と、新NISAの年間上限投資額を比較してみましょう。 ジュニアNISA 新NISA 年間上限投資額 年間80万円 年間360万円(つみたて投資枠:120万円、成長投資枠240万円) →2023年までの一般NISAと比較して240万円分非課税投資上限が引き上げられている つまり、ジュニアNISAの廃止により80万円分の非課税枠がなくなりますが、新NISA制度になることで240万円もプラスで非課税投資できるようになるのです。 この増えた「240万円分」のうち「将来子供に残したい分」を投資すればジュニアNISAの代わりとして使えるという仕組みです。 しかし、この場合「将来子供にお金を渡すとき」に注意が必要です。 ジュニアNISAの場合「投資したタイミング」で贈与税の対象となります。つまり年間110万円分の基礎控除のうち「80万円(ジュニアNISAの投資分)」が埋まる=110万円以内なので贈与税は0円ということです。 しかし、新NISAの場合「いつ・いくら売却するか」も自由ですし、「いくら子供に渡すか」も自由です。 ですから、うっかり1年の間に「110万円以上」の資金をあげてしまうと「贈与税が課せられる」という税制面でのデメリットが生じてしまいます。 ですから、もし「子供がハタチになるタイミングで300万円くらい渡してあげたい。」と考えているのであれば 「110万円以下の金額で複数年に分けて、子供の銀行口座に移すようにする」 などの工夫が必要になります。その点さえ抑えておけばジュニアNISAがなくなった分のデメリットは、新NISAで十分カバーできますよ。 子供が成人したタイミングで、子供自身の「NISA口座」を作ってもらい、贈与したお金をNISA口座で運用してもらうのもアイデアの一つですね。 投資対象の制限はほとんど気にしなくてOK! 投資対象が制限されるといっても、制限されるのは前述の通り「長期の資産形成に不向きな金融商品」です。 ですから、長期で「将来資金を作ろう」と考えている人にとってはほぼ影響はありません。むしろ、リスクが高い金融商品を避けられるメリットともいえます。 もし、リスクをとって「成長投資枠で儲けたい!」と考えているのであれば、デリバティブ取引が使われている投信などではなく、成長性の高い「外国株式」の中からお宝銘柄を狙う方法をおすすめします。 →みんかぶ米国株(https://us.minkabu.jp)で銘柄を探す 新NISA制度を利用するデメリットはある?それともない? 新NISA制度を利用するデメリットはほとんどありません。 強いていうなら「生活資金を削ってまで使うのはダメ」ということですかね。いくら長期の資産運用目的だからといって「生活水準を落とし、ギリギリの生活の中で投資する」というのは本末転倒です。 ですから、新NISA制度は「余裕資金の範囲内」で使う分にはメリットのほうが多い制度といえます。 関連記事:新NISA制度はいつから始まる?年間上限投資額や非課税期間など変更点をわかりやすく解説 新NISA制度は大きな改悪点・デメリットはほとんどないが注意点は存在する 最後に、新NISA制度は大きな改悪点・デメリットはありませんが「うっかりしていると損する可能性がある注意点」は存在します。 具体的な注意点は以下の2つです。とくに「証券口座を変えようと思っていたのに忘れてしまい変えられなかった!」となると悲しいですし、モチベーションも下がってしまうので注意しましょう。 2023年までの一般NISA口座から新NISA口座へのロールオーバーは出来ない 基本的にNISA口座を保有している場合、同じ証券会社に新NISA口座が作られる 2023年までの一般NISA口座から新NISA口座へのロールオーバーは出来ない 一般NISAの非課税期間(5年)が終わった分の株式・投資信託等は、新NISA口座へロールオーバーは出来ません。 ※ロールオーバー:非課税期間が終了した際、保有している金融商品を翌年の非課税投資枠に移行(移管)することをロールオーバーという。 そのため、何も対応をしない場合、一般NISA口座内で非課税期間が終わった分は「課税口座」に移されてしまいます。 すると、いままでの利益分が課税されることはないものの、今後発生した利益分は課税されてしまいます。(いままでの利益分が課税されないのは、特定口座に移す際に、評価額で新規買付した扱いになるためです。) ですから、対応策としては一般NISAの非課税期間が終わる前に「売却」をして一度現金化してから、新NISAに再投資する方法があります。 こうすることで、ロールオーバーした場合とほぼ変わらない効果が得られます。 しかし、非課税期間が終了する一般NISA分の評価額が240万円以上の場合、1年では投資しきれないので注意しましょう。 基本的にNISA口座を保有している場合、同じ証券会社に新NISA口座が作られる どの証券会社も「NISA口座を保有しているお客様は、新NISA口座の開設も証券会社側で行うよ」という対応を取っています。 ですから「新NISAから証券口座を変えようかな」と思っている場合には以下の手順を踏む必要があります。 金融商品取引業者変更届を使っている証券へ送付 勘定廃止通知書を発行してもらう 勘定廃止通知書と非課税口座開設届出書を「NISA口座を作りたい証券会社」に送付 2023年10月から手続きができるようになるため、忘れずに対応しておきましょうね。 新NISAで後悔しないために賢く使って資産形成を進めよう! 良い噂も、悪い噂もある「新NISA」ですが、筆者としては「初心者が資産形成をするにはピッタリの制度」だと感じています。 徐々に年金や退職金が頼りなくなっている現代だからこそ、こうした「資産形成の助け」になる制度は賢く活用したいですね。 この記事はいかがでしたか?感想を一言!