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トランプの「勝利宣言」は“ナラティブ”づくり……中国が“好機”とみるイラン戦争の現在地

(c) AdobeStock

 トランプが一方的な「勝利宣言」を行ったイラン戦争。元朝日新聞編集委員でキヤノングローバル戦略研究所上席研究員の峯村健司氏は、「一番悪いシナリオに向かって進んでいる」と話す。なぜトランプは、このタイミングで演説をしなければならなかったのか。トランプの思惑や現状を好機とみる中国についてまで、峯村氏にうかがった。

 みんかぶプレミアム特集「トランプ、習近平、高市の本音」第4回。

目次

「4月29日」がイラン戦争の期限

 そもそも、このイラン攻撃自体、間違ったものでした。戦争を始めるにあたって重要なことは、「戦略目標を定めること」です。

 イスラエルはイランの体制転換を目指していましたが、米国防総省のエルブリッジ・コルビー次官(政策担当)は「体制転換を目的としていない」と明確に否定。アメリカは、明確な戦略目標を定めないままに攻撃を開始してしまったのです。

 同盟国同士が協調できていないことの矛盾が根底にあり、その矛盾が日を追うにつれ増大しています。それが、トランプが「圧倒的勝利」および「攻撃はまだ2〜3週間続く」と述べた4月2日の演説に凝縮されたと感じています。

 この中身の乏しい演説に、人々は大きく失望しました。トランプがなぜこのタイミングで演説を行ったのかについては、いくつかの理由があります。

 まずは、4月29日に戦争開始から60日が過ぎるということ。アメリカでは、議会承認なしに軍事行動ができる期間が「60日」と決められています。しかし、いまの議会の状況を見ると、とても賛成を得られるような状況ではないでしょう。

 またトランプは戦争を始める際、「数週間でケリをつける」と言っていました。その「数週間」は、もう過ぎてしまっています。そのため、ここで「戦争を終わらせるつもりがある」ことをアピールしておく必要があったのです。

トランプの演説は「ナラティブづくり」

 トランプが意識したのは、三つの層への呼びかけでした。一つ目の層はネタニヤフ首相を中心とするイスラエル。二つ目は共和党のリンゼー・グラハム上院議員らを中心とした強硬派。三つ目が、MAGA(Make America Great Again)派の中でも熱狂的な支持者です。

 トランプの本音としては、とても戦争に勝ったとは思っていない。最近の発言を見ていると「完全に失敗だった」と思っていることがうかがえます。それでも「われわれは勝ったんだ」というナラティブを形成するため、4月2日のスピーチはトランプにとって必要だったと言えます。

 いまのトランプの目的は、「戦争を終結する」になってしまっています。トランプにとっての最大の誤算は、イラン攻撃開始直前に行ったネタニヤフとの電話会談から生じたとみています。ネタニヤフが言った「われわれはイランの防空システムを徹底的に叩いているので、反撃はされない」というネタニヤフの希望的観測を信じてしまったのです。

 ところが蓋を開けてみれば、イランには相当数のドローンやミサイルが残っていた。ベネズエラのような短期決戦では終わらなかったのです。

 私はずっと、「一番の最悪のシナリオでありメインシナリオは、ホルムズ海峡がイランに実効支配されている状況で、トランプがぶん投げて停戦する」ことだと言い続けてきました。

 それがいま、実現しようとしています。4月11日にはパキスタンの首都イスラマバードで、交戦後初めてとなる停戦協議を開始しています。

 この結果は、1期目のトランプ政権を見ていると容易に想像がつきました。トランプは攻勢をかけたり、ディールをしているときには非常に積極的なのですが、行き詰まると投げ出してしまう性質があるのです。

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この記事の著者
峯村健司

キヤノングローバル戦略研究所主任研究員。北海道大学公共政策学研究センター上席研究員。1974年、長野県生まれ。朝日新聞入社後、北京・ワシントンで計9年間特派員を務める。ハーバード大フェアバンクセンター中国研究所客員研究員、朝日新聞編集委員を経て現職。2011年、優れた報道で国際理解に貢献したジャーナリストに贈られるボーン・上田賞を受賞。著書に『十三億分の一の男』(小学館)、『潜入中国』(朝日新聞)など、監訳書に『中国「軍事強国」への夢』(劉明福著、文春新書)がある。

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