古謝新知事も危惧する沖縄の1人当たり県民所得「231.5万円」の現実 新県政に求められる「大型箱もの」からの脱却
9月13日投開票の沖縄県知事選で、古謝玄太氏が得票率約59%を獲得し初当選を果たした。直後に報じられた「2027年度の沖縄振興予算3000億円超へ増額調整」というニュースは一見朗報に映るが、事業効果の検証もないまま金額先行で予算を決めれば、使い道を探すだけの無駄遣いを招きかねない。元プレジデント編集長で作家の小倉健一氏が、知事交代の背景と「補助金・公共工事頼み」からの脱却、そして新県政が真に取り組むべき手続き改革の重要性を論考する。
みんかぶプレミアム連載「小倉健一の新保守宣言」
玉城デニー氏の敗北が告げる対立政治の終焉 古謝玄太新知事に求められる投資環境の改善
9月13日の沖縄県知事選で、古謝玄太氏が得票率約59%で玉城デニー氏を破った。私はこの交代を歓迎したい。基地問題で政府と対立してきた玉城県政から、国と県が協力して投資環境を変える仕事へ進んでほしいからだ。
その翌日、共同通信は、政府・与党が2027年度の沖縄振興予算を3000億円超へ増やす方向で調整に入ったと報じた。概算要求の2897億円から上積みするという。これは増額を調整する段階の報道である。
増額の報道をそのまま朗報として受け取ってはいけないと思う。事業の効果を確かめる前に予算の規模を決めれば、金額に合わせて使い道を探す行政になる。古謝氏に期待するのは、企業の投資を妨げる手続きを変える仕事だ。補助金と工事を増やしただけでは、県民の稼ぐ力は上がらない。
古謝氏もSNSで触れた「231.5万円・全国最下位」の重み 観光回復だけでは解決しない沖縄の宿題
古謝氏の公約には空港の拡張、大型の会議・展示施設、サッカースタジアムが並ぶ。政府との関係改善を使って従来型の補助金行政を膨らませるなら、県政を替えた意味がない。玉城県政が残した宿題は重い。古謝氏自身も指摘するように、令和5年度(2023年度)の県民経済計算における沖縄の1人当たり県民所得は231.5万円と全国最下位が続いている。県の統計では、1人当たり県民所得の全国比は2018年度の73.1%から2023年度の65.7%へ下がった。コロナ禍や全国側の所得の伸びも反映した数字で、低下の全てを知事の責任にするのは誤りだ。私は玉城県政を観光の回復だけで評価しない。働く人の所得まで回復が届いたかを問うべきだからだ。
2023年度には企業所得が24.0%増えたのに対し、給与や会社負担の社会保険料を含む雇用者報酬の総額は2.0%増だった。県民所得には企業の所得も入る。地域全体の所得が伸びても、働く人の給料が同じ勢いで増えたことにはならない。古謝氏の「手取りを2倍」という約束も、物価を差し引いた給料で確かめる必要がある。
観光を増やせば解決するという発想にも弱点がある。例えばホテルの部屋と従業員を倍にし、給料と利益の原資となる付加価値も倍になったとする。1人当たりの稼ぎは変わらない。予約処理や清掃の効率化で、同じ時間に生み出す価値を増やす。企業が設備や技能に投資しやすい環境を優先したい。