一体いくら必要なの? 投資のプロが「老後準備は30歳までに320万円で十分です」と断言する理由

老後の心配ばかりしている人が多い。新NISAをコツコツ続けながら、それでもどこか不安が拭えない。SNSを開けば「老後は3000万円必要」「いや、5000万円ないと無理だ」という声が飛び交い、見るたびに目標額は膨らんでいく。
しかし、チャンネル登録者70万人超を誇る人気投資YouTuberで、30年以上の投資キャリアを持つ上岡正明氏はこう言い切る。
「30歳までに320万円あれば、老後は十分に間に合います」
たった数百万円。それで本当に乗り切れるのかーー。30年戦い続けてきたプロが語る、「身の丈の老後資金」の組み立て方とは。連載全3回の第1回。
目次
みんな「必要のない資金」を貯めている
「老後2000万円問題」が話題になって以降、「2000万円じゃ足りない」「3000万円は必要だ」「インフレを考えれば5000万円ないと無理」という声が次々と上書きされていく。気がつけば目標額はどんどん吊り上がり、多くの人が際限なくお金を貯めようと努力しています。
たしかに、お金はあるに越したことはありません。でも、人生の自由を犠牲にして5000万円を貯める必要が、本当にあるのか。子どもの教育費を削り、行きたい旅行を諦め、新NISAにばかり回して家計が苦しい。そんな状態は「良い人生」と言えるのでしょうか。
多くの人が老後に漠然とした不安を抱えるのは、ゴールが見えていないからです。霧の中を歩いていると、その先の道がたとえ平坦でも、先が見えないから不安を感じてしまいます。老後資金の話になると、誰もこの「ゴール」を具体的に示してくれません。
まずはみなさん、自分の老後にとって本当に必要な金額を具体的な数字として把握しましょう。それさえできれば、不安の大半は消えてなくなります。
では、本当に必要な金額はいくらなのか──。私が提唱しているのは、65歳時点で1270万円です。
老後資金は1270万円で済む
なぜ1270万円で老後生活を乗り切れるのか。それは、老後の生活費は預貯金だけではなく、3つの収入源があるからです。
一つ目は公的年金です。65歳になれば、国民年金や厚生年金が支給されます。モデル世帯であれば、夫婦合算で月20万円前後。これが、老後の生活費の主軸になります。
二つ目は支出そのものの減少です。意外と見落とされがちですが、人は70歳を超えると、現役時代ほどお金を使わなくなる。旅行も億劫になる。車でドライブする機会も減る。
基本的に家にいる時間が長くなるので、外食費も交際費も自然と落ちていきます。医療費も日本には高度医療制度があるため、そこまで高額な出費にはなりません。
三つ目は、資産の取り崩しです。ここで多くの方が誤解しているのが、「老後は貯金をただ取り崩す苦しい節約生活になる」というイメージです。残高がジリジリ減っていくのを眺めるだけの日々を想像して、不安になる方が本当に多い。
ですが、「ただ取り崩す」のと「運用しながら取り崩す」のとでは、まったく話が違います。
1270万円を年利4%で運用しながら、毎年その4%、月にして約4万円強を取り崩していく。年間の運用益と取り崩し額がほぼ釣り合うので、元本はほとんど減りません。これが「4%ルール」と呼ばれる、老後資金運用の基本的な考え方です。
これを年金と組み合わせると、老後の家計はこうなります。
老後の生活費 = 年金(月22万円前後)+ 運用益(月4万円強)+ 支出減少(70歳以降は自然と落ちる)
1270万円を貯金で持っているだけでは、ただの減っていくお金です。けれど運用に乗せた瞬間、それは「毎月4万円強を生み続けてくれる装置」に変わる。この発想の転換こそが、老後不安から解放される唯一の鍵なんです。