この記事はみんかぶプレミアム会員限定です

停滞する中国経済…習近平が直面する「2027年の危機」で、台湾有事は本当に起きるのか

停滞する中国経済…習近平が直面する「2027年の危機」で、台湾有事は本当に起きるのか
(c) AdobeStock

 中国の経済が「危機」に向かっている。表面だけを見れば堅調のように映るものの、不動産市場の低迷や潜在成長率の低下、内需停滞などを背景に先行きは怪しい。この動きとリンクするように最近では「台湾有事」の可能性が一層注目されてきた。中国の構造的な歪みに対する人民の不満を外に向ける、すなわち「対台湾」をクローズアップしていく狙いがあると見られるためだ。このまま台湾有事の可能性は高まっていくのか。その時、日本はどのように動くのか。経済アナリストの山田隆氏は「現実的なリスクと見なければいならない」と指摘する。はたして、日中開戦はあり得るのか―。

 みんかぶプレミアム特集「中国経済崩壊か 習近平の黄昏」

目次

停滞する中国経済。かつての「二ケタ成長」の勢いは姿を消した

 アジアの大国が浮遊している。中国の実質GDP成長率(2025年)は前年比プラス5.0%で全人代の目標(5%前後)は達成したものの、1980年代以降のような高成長の勢いはもはや見えない。

 2010年代半ばから成長率は鈍化し、不動産バブルの終焉に加えて新型コロナウイルスの影響なども響いた。伸び悩む内需、国内消費の低迷は経済全体を下押しし、続くデフレ圧力は悩みとなっている。かつての「二ケタ成長」の勢いは姿を消したと言える。

 問題なのは、中国経済の後退が一時的なものではなく、構造的な歪みから生じている点だ。中国と言えば、活発な不動産投資やインフラ整備などが原動力だった。だが、不動産市場は冷え込み、住宅価格が下落。それに連動する形で消費意欲も後退している。インフラ投資による景気刺激策も以前のような効果を発揮できていない。

足元の輸出は前年比プラス5.5%であり、もはや輸出頼みの状況と言えるだろう。ただ、地方政府の債務膨張や社会保障増大といった課題に直面している。

国際通貨基金(IMF)は2月、中国の2026年の成長率が4.5%に減速するとの予測を維持したが、その後も成長が鈍化していく見通しとなっている。2025年の貿易黒字額は1兆1889億ドルと初めて1兆ドルを突破したものの、外需・輸出依存型で「危機」を脱することができると考える専門家は少ないだろう。

米国で唱えられてきた「中国、2027年の危機」

 中国経済を過度に悲観する必要はないかもしれないが、習近平国家主席にとって重要な問題となっているのは間違いない。では、中国が今後とりうるシナリオにはどのようなものがあるのか考えたい。もちろん、一義的には景気刺激、経済再興を急ぎつつ、構造的な歪みを解消していく手を打つことになる。ただ、それだけで問題が解決に向かわず、人民の不満がエスカレートしていけば話は別だ。国内の不満を外に向ける策を練るトップが表出してきたことは、歴史が証明している。

 今の中国を見れば、それが「台湾」に向かうに違いない。それも遠くない将来においてである。米国の一部では「2027年の危機」なるものが唱えられてきた。米軍司令官がその可能性を指摘したり、習国家主席の続投がかかる共産党大会の年を迎えたりするからだ。今年5月には米国のトランプ大統領が9年ぶりに訪中し、習国家主席との首脳会談を行ったのも「台湾危機」を見据えたものだ。

トランプ大統領は台湾について何を考えているのか

 印象的なのは、トランプ大統領が帰途に明かした次の言葉に尽きる。「台湾について多くの話し合いをした。習国家主席が『台湾を中国が攻撃したら米国は防衛するのか』と率直に聞いてきたが、私は『それは話さない』と答えた」。超大国のトップ同士で話した最重要事項が明かされるのは異例中の異例と言えるだろう。

 トランプ大統領は、こうも語っている。「私は、9500マイルも離れた場所で戦争をすることは望まない」。対する習国家主席は「処理を誤れば中米両国は衝突し、非常に危険な状況に陥ることになる」「台湾海峡の平和と安定の維持は中米双方にとって最大公約数。米国は台湾問題の処理に細心の注意を払う必要がある」とクギをさしている。

 台湾の頼清徳総統はSNSに「中国こそが地域の不安定化と現状変更の根源」と批判したが、圧倒的な軍事力で世界中を振り回すトランプ大統領をもってしても台湾問題に新たな動きが出なかったことは重い意味を持つ。

台湾有事は本当に起きるのか

 言うまでもなく、中国は台湾を「不可分の領土」と位置づけて統一を目標としている。台湾周辺での軍事行動を活発化し、大規模演習も繰り返してきた。ただ、これが「偶発的衝突」を除いて、今すぐにでも起こる「危機」なのかと言えば筆者は否定的である。

 1つ目の理由は、トランプ大統領の任期が2029年1月まであることだ。世界中の人々が見てきた通り、トランプ氏の考えや言葉は頻繁に変わる。たしかに先の米中首脳会談は米国側が大幅に譲歩したように見える結果となったが、そのスタンスがいつまで続くのかはわからない。習国家主席としてもトランプ大統領の姿勢を見極められないまま「指令」を出すのは極めてリスクが高いはずだ。

 もう1つの理由は、中国が台湾侵攻を本気でやるのであれば、大きなコストを伴うことを覚悟しなければならない点にある。先に触れたように、中国は経済が停滞している。そこに加えて、台湾との本格衝突は経済への影響が計り知れない。海外からの投資が逃げ、経済制裁や金融市場の混乱などが生じれば、中国側にも大きなコストになる。中国国内で高まる不満を外敵に向けたいのは本音だとしても、それが台湾侵攻を意味すれば同時に大きな痛手を負うというジレンマに悩まされることになるのだ。

専門家の間で指摘されている「2035年の台湾危機」

 ただ、中国が国家目標の経済成長率を維持しつつ、トランプ氏が2029年に大統領としての任期満了を迎えればフェーズはまた変わり得る。専門家の間で指摘されているのは、中国の核弾頭数が米国と均衡するとみられる「2035年の台湾危機」説である。率直に言えば、この頃の国際情勢がどうなっているのかを正確に予測することは激動の時代に困難だろう。すなわち、台湾危機の到来が「絶対にない」とは言えないものがある。

 トランプ大統領という巨大な存在がいなくなり、中国が超大国として勢いを見せつけている時代ならば話は別だ。実際、トランプ大統領は今年に入ってベネズエラ攻撃に続き、イランにもイスラエルとともに攻撃を開始した。それと似たようなことを習国家主席が軍事力を背景にしないとは言い切れないだろう。

実際に「台湾有事」を迎えた時、日本はどのように対処できるのか

 では、実際に「台湾有事」を迎えた時、日本はどのように対処できるのだろうか。高い内閣支持率を誇る高市早苗首相といえども、さすがに2035年に政権を担っている可能性は極めて低い。もちろん、安倍晋三元首相のように「再登板」していることも考えられなくもないが、国家として誰がリーダーであっても国民や領土・領海・領空を守る姿勢が求められるのは当然だ。

 現在の高市政権の外交・安全保障政策は、「台湾有事」を見据えたものに映る。国の防衛政策の基本方針となる国家安全保障戦略など「安全保障3文書」を年内に改定予定で、有事に備えた態勢づくりを急いでいるのは明白だ。4月には防衛装備移転三原則と運用指針も改定している。

 自民党は北大西洋条約機構(NATO)加盟諸国や韓国などが防衛費GDP比3~3.5%を目標としていることに触れつつ、「5年以内の防衛力の変革」に向けて動き出すよう政府に求めている。仮に対GDP比3.5%となれば、防衛費は20兆円程度となる計算だ。台湾海峡の平和と安定は、日本の安全保障のみならず経済にも直結することを考えれば、有事に備えないのはあり得ないという高市首相の意向に沿ったものなのだろう。

台湾有事は「日本有事」なのか

 筆者は、「台湾有事」においては2つのパターンを想定すべきと考えている。1つは、まさに中国が「台湾上陸」を目指すケースだ。ただ、これは先に説明した通り、日米の抑止力強化がある中で全面侵攻することは現時点では考えにくいと言える。もう1つのパターンは、台湾周辺の海上封鎖や限定的な軍事圧力などが行われるケースだ。こちらの方は、仮に「台湾有事」なるものが起きるならば可能性が高いのではないか。

 高市首相は2025年11月の衆院予算委員会で「(中国軍が)戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になり得るケース」と従来よりも踏み込んで答弁した。これは台湾有事の時、我が国の集団的自衛権行使の前提となる「存立危機事態」に該当する事態もありうるとの認識を示したものと言え、中国が猛反発している。

 台湾有事の際に最も重要なのは、それを「日本有事」と見るか否かである。すなわち、海上輸送路(シーレーン)の遮断や南西諸島周辺の安全保障環境悪化などに加え、攻撃対象となり得る在日米軍基地、そして日本国民の生命を守るために安全保障法制上どのように位置づけるのかが重要となる。

 これまでの高市首相のスタンスを見る限り、こうした事態が生じれば「存立危機事態」と認定する可能性が高いのではないか。事態認定されれば、自衛隊は米軍の後方支援を拡充できるようになる。さらに事態が悪化する可能性があれば、限定的な集団的自衛権の行使に向かうだろう。米艦の防護や弾道ミサイル迎撃などが想定される。その理由は、あくまでも「日本を守る」ための判断という整理をつけることになる。

 もちろん、これはあくまでもシミュレーションの世界である。実際に高市首相のみならず、時の宰相がどのように国家を守ろうとするのかはわからない。ただ、少なくとも有事を避けるために日本として何ができるのかを考え、準備はしておかなければならないだろう。それは戦争の準備ではなく、抑止力を確保するための準備と言える。

 残念ながら、日本だけでは台湾有事の際の抑止力を持たない。それは強固な日米同盟と密接不可分のものだ。これまで台湾有事は「抽象的なリスク」と捉えられてきたが、今や「現実的なリスク」と踏まえながら準備を重ねる必要がある。トランプ大統領と高市首相の良好な関係は抑止力として機能するとの見方がもっぱらだが、2035年の日米関係や米中関係はどうなっているのだろうか。日本が直視すべきリスクへの対処を見誤れば、国家も国民も大打撃を受けることは間違いない。

今すぐ無料トライアルで続きを読もう
著名な投資家・経営者の独占インタビュー・寄稿が多数
マネーだけでなく介護・教育・不動産など厳選記事が全て読み放題

    この記事はいかがでしたか?
    感想を一言!

政治・経済カテゴリーの最新記事

その他金融商品・関連サイト

ご注意

【ご注意】『みんかぶ』における「買い」「売り」の情報はあくまでも投稿者の個人的見解によるものであり、情報の真偽、株式の評価に関する正確性・信頼性等については一切保証されておりません。 また、東京証券取引所、名古屋証券取引所、China Investment Information Services、NASDAQ OMX、CME Group Inc.、東京商品取引所、堂島取引所、 S&P Global、S&P Dow Jones Indices、Hang Seng Indexes、bitFlyer 、NTTデータエービック、ICE Data Services等から情報の提供を受けています。 日経平均株価の著作権は日本経済新聞社に帰属します。 『みんかぶ』に掲載されている情報は、投資判断の参考として投資一般に関する情報提供を目的とするものであり、投資の勧誘を目的とするものではありません。 これらの情報には将来的な業績や出来事に関する予想が含まれていることがありますが、それらの記述はあくまで予想であり、その内容の正確性、信頼性等を保証するものではありません。 これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、投稿者、情報提供者及び企業IR広告主は一切の責任を負いません。 投資に関するすべての決定は、利用者ご自身の判断でなさるようにお願いいたします。 個別の投稿が金融商品取引法等に違反しているとご判断される場合には「証券取引等監視委員会への情報提供」から、同委員会へ情報の提供を行ってください。 また、『みんかぶ』において公開されている情報につきましては、営業に利用することはもちろん、第三者へ提供する目的で情報を転用、複製、販売、加工、再利用及び再配信することを固く禁じます。

みんなの売買予想、予想株価がわかる資産形成のための情報メディアです。株価・チャート・ニュース・株主優待・IPO情報等の企業情報に加えSNS機能も提供しています。『証券アナリストの予想』『株価診断』『個人投資家の売買予想』これらを総合的に算出した目標株価を掲載。SNS機能では『ブログ』や『掲示板』で個人投資家同士の意見交換や情報収集をしてみるのもオススメです!

(C) MINKABU THE INFONOID, Inc.