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「いらっしゃいませ」が消える?コスト高騰が飲食業界の常識を根底から覆す

(c) AdobeStock

 人件費の高騰、人手不足、そして中東情勢の悪化。幾重にもコストの圧力がのしかかる飲食業界では、省人化・DX化の波が大手チェーンから個人店まで一気に広がっている。その現状について、フードジャーナリストの山路力也氏に話を聞いた。(聞き手・望月悠木)

目次

ファミレスから「人のサービス」が消える

――中東情勢の悪化により、コストや売上といった数字に深刻な影響を与えそうです。その一方で、数字には表れない変化としてどういったことが挙げられますか?

 一番わかりやすい例で言えば、ファミレスのサービスだと思います。少し前までは、スタッフが入り口で出迎えて、席まで案内して、水を持ってきて、注文を聞いて、お会計をするというのが当たり前でした。ただ、そのすべてを人がやっているファミレスは現在ほとんどありません。

 受付は発券機や番号案内、注文はテーブルのタブレット、配膳はロボット、会計はセルフレジ。以前は人がやっていた仕事の大部分が機械に置き換わり、今ではそれがむしろ標準的なスタイルになりました。

 特にすかいらーく系列や回転寿司チェーンは象徴的です。店員とほとんど会話せずに食事を終えられる店舗も珍しくありません。注文ミスを防ぐことができ、少人数でも店舗を回せるため、店側にとっては非常に合理的です。そもそも、以前から飲食業界にとって、コスト削減は喫緊の課題でした。比較的着手しやすいコストである人件費を削減する流れは、中東情勢の悪化によって加速する可能性があります。

――飲食店で店員と接する機会はほとんどなくなるかもしれませんね。

 一概にそうは言えません。テーブルオーダーを維持しているファミレスとしてロイヤルホストが挙げられますが、単に「DX化が遅れている」という話ではありません。あくまで「人による接客」をブランド価値として残しているからです。

 つまり、今後の外食業界において「どこまで人を介在させるか」は、店ごとの差別化要素になりえます。昔は人が接客するのが当たり前でしたが、今は“人が接客してくれること”それ自体が価値になっていくかもしれません。

――こうした動きはチェーン店だけでなく、個人店にも広がっているのでしょうか。

 かなり広がっています。今では個人経営の食堂やラーメン屋でも、モバイルオーダーやスマートフォン決済を導入している店は珍しくありません。以前はPOSレジや専用端末を一式そろえる必要があり、その導入費用もかなり高かった。

 ただ、現在はパソコン1台と利用客のスマートフォンだけで完結できるサービスも増えています。また、DX関連サービスを提供する企業が増えたことで競争が起き、導入コストが一気に下がったことも大きいです。

 特にコロナ禍以降、「非接触」の需要が一気に高まり、現在では人件費高騰や人手不足も深刻化しています。その結果、「DX化したほうが便利だから導入する」という段階ではなく、「導入しないと店が回らない」というレベルに変わってきました。コロナ禍以前から「いつかやらなければ」と言われ続けていた飲食業界のDX化が、コスト高騰によって一気に加速した、そして今後も加速していく、と言えます。

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この記事の著者
山路力也

フードジャーナリスト、ラーメン評論家。「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を常に考えながら、テレビ・雑誌・ウェブ・SNSなどさまざまなメディアで情報を発信中。飲食店のプロデュースやコンサルティングも数多く手掛けている。

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