元キオクシアの半導体研究開発者で資産10億円規模の投資家が語る「AI相場の次の主役」
2026年6月、キオクシアの時価総額が一時、トヨタ自動車を上回った。上場からわずか1年半で、株価は50倍。AI相場の熱狂を象徴する出来事である。
「AI半導体の業界地図を深く見て分析すれば、次に来る銘柄も見えてきます」。そう語るのは、元キオクシアの半導体研究開発者で、YouTube「もふもふ不動産」を運営する投資家のもふ氏(菊地夏紀)だ。2011年から東芝メモリ(現キオクシア)で3次元フラッシュメモリ第ゼロ世代から第3世代の立ち上げをおこなった経験がある。
なぜキオクシアはここまで買われたのか。そして、熱狂が一巡したいま、次に伸びるのはどこなのか。元キオクシアの研究開発者の目で半導体産業の地図を描き、多くの投資家がまだ気づいていない「次」を読み解いていく。連載全3回の第1回。
目次
目先の銘柄より、業界の全体像を掴む
「キオクシアがトヨタの時価総額を抜いた」。そう聞くと、半導体はそんなに儲かるのか、乗り遅れたくない、と感じる方も多いと思います。その気持ちはよく分かります。ただ、こういう局面で、上がっている銘柄にそのまま飛びつくのは、いちばん危険な動き方です。
半導体は、流れの速い世界です。いま輝いている主役が、半年後には脇役へ回ることも珍しくありません。ですから、まずおすすめしたいのは、個別の銘柄に飛びつく前に、業界そのものの「地図」を頭に入れておくことです。
今回からの3回でやるのは、まさにそこです。目先の急騰銘柄をどう買うか、ではなく、半導体という業界の特徴と、世界の勢力図を、一枚の地図として描いていきます。なぜそんな遠回りをするのか。業界の構造さえ分かれば、「次に何が伸びるのか」を、人に聞かずとも自分で読めるようになるからです。これは、エンジニア出身の投資家として、僕がいちばん大事にしている視点でもあります。
連載の見取り図を、先に示しておきます。1回目は、AI半導体がなぜ爆発しているのかという全体像と、いま主役に立つキオクシア。2回目は、設計から製造、素材・装置までの勢力図と、次に来る場所の見つけ方。3回目で、その地図をもとに「次に来る具体的な銘柄」を挙げていきます。
まずは入り口として、「半導体」という言葉のとらえ方から始めましょう。
伸びるのはAI半導体だけ
そもそも「半導体」は、非常に間口の広い言葉です。電気を使う製品には、ほぼ例外なく半導体が入っています。光を出すLED、映像を捉えるイメージセンサー、車を駆動するパワー半導体、データを蓄えるメモリ、計算を担う頭脳のチップ。用途も構造もまるで異なるものが、すべて「半導体」という一語に押し込められています。
そのなかで実際に伸びているのはAIに使われる半導体です。いま世界では、対話型の生成AIや画像づくり、企業の業務システム、さらには自分で考えて動くエージェントまで、さまざまな場面でAIが使われはじめています。AIを加速させるために、ハイパースケーラーなど各社が100兆円を超える投資をしています。そこにチャンスがあるとみて投資しています。
具体的には、巨大なデータセンターの中で動いているAIを加速するのに必須の半導体に注目しています。そこにはAI専用の半導体ーー計算を担うGPU、それに高速でデータを送るHBMと呼ばれるメモリ、結果を保存するフラッシューーが、大量に積み込まれます。AIが世の中に広がるほど、この専用半導体の需要が積み上がっていく構図です。
その伸び方が、とにかく桁違いです。世界中の企業がデータセンターに巨額を投じ、GPUは作っても作っても追いつかない品薄が続いています。一方で、スマホやパソコン、車に載る半導体の多くは、買い替えの波に沿って横ばい圏にとどまっています。
なぜ、いまになって「AI関連半導体株」が急に伸びたのか。技術そのものは以前からありましたが、AIの実力がここ数年で一段跳ね上がり、2022年のChatGPT登場のあたりから、一気に実用が広がりました。需要が本格的に火を噴いてから、まだ数年しか経っていない段階にあります。