相続で”仲良し家族が崩壊”する意外な原因。「うちには大した財産がない」という過信の危険性
「うちは家なんて大したものじゃないし、預貯金がメインだから分けるのも簡単だ」「兄弟姉妹仲が良いから、話し合えばすぐに決まる」——そう考えて特別な準備をしていないご家庭こそ、実は一度こじれると修復不能な「泥沼の対立」に直面しやすい。
そう語るのは、「小さな相続専門税理士」としてYouTubeなどで情報発信を続けている、税理士のきむらあきらこ氏だ。きむら氏によれば、現金や預貯金といった一見分けやすい財産であっても、過去の「生前贈与の履歴」や「親の介護の差」が引き金となり、長年積み重なった感情のしこりが一気に爆発するケースが後を絶たないという。
本稿では、仲が良いはずの兄弟姉妹がなぜ相続で対応に行き詰まってしまうのか、生前贈与に潜む意外な罠と、知らなかったでは済まされない「遺言書」をめぐる失敗事例について同氏が徹底解説。全3回の第2回。
みんかぶプレミアム連載「取り返しのつかない相続」
なぜ「仲が良い兄弟姉妹」ほどドツボにはまってしまうのか?
「うちは兄弟姉妹仲が良いから大丈夫」とおっしゃるご家庭は多いのですが、実は仲が良い兄弟姉妹でも深刻なケンカに発展することがあるのが相続の恐ろしいところです。
その理由は、仲が良い兄弟姉妹だからこそ、お互いに遠慮なく本音をぶつけ合ってしまうことがあるです。
遺産分割の話し合いの席で、「お兄ちゃんばかり私立大学に行かせてもらった」「私の方がずっと親の面倒を見てきた」といった昔の思い出やわだかまりを直接言い合っているうちに、感情的な喧嘩に拍車がかかってしまいます。さらに、それぞれが配偶者に相談する中で、相続人本人の考え方が変わり、当事者同士の調整が難しくなることもあります。
富裕層であれば、周りの失敗談を聞いたり専門家に相談したりして生前に遺言書を書くなど抜かりなく準備をしています。しかし「うちは大丈夫」と思い込んでいる一般家庭ほど相続準備をしていないため、相続発生後に「何から手をつけるべき?」「遺産はどのように分ければよいのだろう」という事態に陥ります。
「孫への生前贈与」が遺産分割時に生む思いがけない不平等
現金なら分けやすいはずと思われがちですが、ここに「過去の生前贈与」が絡んでくると話が一気に複雑になります。
年間110万円までの非課税枠を活用した生前贈与は節税対策として一般的ですが、親御さんが子どもだけでなく「孫」にも贈与を行っていた場合、大きな不公平感が生まれることがあります。
例えば、長男の家には孫が3人、次男の家には孫が1人としましょう。親が子どもと孫も含めて毎年110万円ずつ贈与していた場合、長男側の一家全体には年間440万円が渡っているのに対し、次男側は220万円しか受け取れていない計算になります。
親が亡くなった後、「残った現金は半々に分けよう」と話し合っていても、後から「長男のところは孫も含めて何百万円も生前にもらっていた」という事実が分かると、次男側に強い不満が残り、不調和の元になります。生前の贈与や援助の情報はオープンにし、分割の際にもお互いに配慮し合うことで争いを避けられます。