「路地を壊して”月島らしい路地”をつくる」タワマン購入前に知っておきたい月島という街の2026年…下町はいつから”もんじゃ焼きテーマパーク”になったのか
「住みたい街」と評される人気のエリアにも、掘り起こしてみれば暗い歴史が転がっているものだ。そんな、言わなくてもいいことをあえて言ってみるという性格の悪い連載「住みたい街の真実」。
書き手を務めるのは『これでいいのか地域批評シリーズ』(マイクロマガジン社)で人気を博すルポライターの昼間たかし氏。第23回は、過去に取り上げた「月島」を再訪。たった1年で激変した街を歩く。
月島「スーパー大戦争」の今後
東京・月島に2026年7月22日、サミットストア月島3丁目店がオープンした。これは素直に嬉しい。
なにしろ月島は、中央区湾岸の中ではスーパーの選択肢が妙に少ない街である。人口は増え続けているのに、大型スーパーが次から次へと開店するわけでもない。その点、朝9時30分から夜10時まで営業するサミットが増えたのは、日々の買い物という意味では文句なく便利になったはずだ。
地元の人はどれくらい喜んでいるのだろうかと、筆者もオープン当日に訪問……間違えて21日に行ってしまった。いや、すでにオープンしていた。プレオープンではなく「試食会」。なんでも、店内の様子をみながらサミット自慢の商品を試食できるという催し。地元民でなくとも入れてくれたので、様子を見てみたらかなりの盛況である。

【006】サミットが開店する。ただそれだけで月島のあっちこっちから人が集まった
気を取り直して、翌日も再訪。前日の盛り上がりをみて混むだろうな〜と30分前に到着したら、すでに大行列である。さすがに人が集まりすぎていることに加えて熱中症の危険もあったのか、早めにオープン。記念のエコバッグまで貰ってしまったので、これはなんか買い物しなければいけないと思って弁当とパンを翌日の分まで買ってみた。セルフレジには混雑緩和のため一台一台に店員が待機して、袋詰めまでしてくれる至れり尽くせりである。
これまで月島のスーパーはダイエー(フードスタイル)とフレッシュフードストア文化堂、フジマートの3店舗。そこに、タワマンによる人口増を見込んで殴り込みをかけたわけで、サミットの熱量が高いのもよくわかる。
しかし、まだまだ勝負の行方はわからない。生鮮食品にも力を入れているサミットだが、野菜と魚ではどうやっても安さと新鮮さでフジマートに軍配が上がる。これまで過去の月島取材で筆者は、フジマートの刺身も実食してみているのだが、どういう仕入れルートを持っているのか、築地場外市場で買うより安いし美味い。さらに、肉に限っていえば、勝どきには九州から進出した、「あんず勝どき店」がある。ここ、わざわざクルマで遠くから買いに来る人がいるほどに肉が豊富で上質。
惣菜の美味さでは群を抜くサミットだが、ここからの月島スーパー戦争はどう展開していくのであろうか……。
「本物」を壊して「月島らしい」路地空間を
さて、そんな楽しいサミットだけど、場所を見ると話は少し複雑になる。
サミットが入ったのは、月島3丁目北地区の再開発で誕生した「グランドシティタワー月島」の1階。地上58階、総戸数1285戸、高さ約199メートルという、とんでもない巨大タワマンである。
月島もんじゃストリートとして知られる西仲通り商店街に面するこの一帯には、もともと木造住宅や小さな店舗が密集していた。それらをまとめて超高層住宅にし、店舗、保育所、デイサービス、広場などを配置したのが、この再開発である。事業者は「月島ならではの趣ある路地空間」まで整備すると説明している。
なんだか、この時点で少し変な話ではある。

【001】月島の裏路地にあった謎神社も取り壊されて現在はビルを建設中
本物の路地を壊して、その跡地に「月島らしい路地空間」を新しくつくるのである。伊勢神宮の式年遷宮みたいなものだと思えばいいのかもしれないが、こちらは20年ごとに伝統を継承するために建て替えるわけではない。58階のタワマンを建てるためである。
タワマンの建設に合わせて町内の神輿倉庫も整備されたり、地元住民への恩恵が大きいのはたしかだろう。それでも、どうやっても画一的なものにしかならないタワマンに魅力があるかは、謎だ。

【002】タワマン竣工と共に人通りのない道も大改装。橋を渡って楽々川べりへ
しかも、月島のタワマン計画は、これで終わりではない。清澄通りを少し南へ歩けば、今度は「月島3丁目南地区第一種市街地再開発事業」の工事が進んでいる。こちらも地上48階、住宅744戸。竣工予定は2028年9月。東京都は事業の目的を、実に率直に「老朽化した木造長屋の密集を解消」と説明している。
つまり、月島名物だった長屋を壊してタワマンにする事業なのである。もちろん、長屋は古い。いや、本当に古い。木造住宅が密集し、細い路地が入り組む街は火災や地震に弱い。消防車が入りづらい場所もある。高齢者が住む住宅ではバリアフリーの問題もある。防災という点から、再開発に合理性があることまで否定するつもりはない。
しかし、それで本当に「月島」がよくなるのかは、まったく別の話だ。