過剰なデマ叩きと“プヲタ”の免罪体質ーー吉田豪が掘り起こした、森本レオの「あまりに真っ黒な実態」
俳優・森本レオさんの訃報をきっかけに、X上で再び脚光を浴びることとなった過去の数々のスキャンダル。不確定なデマの拡散と、プロレスファンによる過剰な絶賛という極端な現象が起きる中、プロインタビュアーの吉田豪氏は締切が重なって忙しい中、急遽「大宅壮一文庫」へと向かった。保倉幸恵氏の死をめぐる都市伝説の真偽から、70年代誌面に刻まれた本人のあまりに苛烈な言動まで、一次資料の検証をもとに森本レオという人物の「実像」を振り返る。
みんかぶプレミアム連載「吉田豪の月イチ気になる話。」
調べて分かった森本レオ「確定情報」と「デマ」の境目
(5分ぐらい遅刻して汗だくで)遅れてすいません! いや、今ちょうどニコニコ生放送の『噂のワイドショー』もあるしこの取材もあるしで八幡山にある大宅壮一文庫まで行って、森本レオさんに関する過去の雑誌記事をひたすら掘り起こして調査して、そこから自転車で直行だったんですよ。
というのも、森本レオさんが亡くなって以降、Twitter(現X)では過去の女性問題や高円寺での悪評が次々と蒸し返される異常事態になっていたじゃないですか。有名人が亡くなってここまで悪い話しか出てこないことってまずないから、ツイートをずっと追ってて。そしたら、どう考えても根拠のない尾ひれがついた噂まで「確定情報」として拡散されているのが気になっちゃったんですよね。これは、ちゃんと調査して不確定なことを言わないようにしないとなって。
典型的だったのが、若くして亡くなったモデル・女優の保倉幸恵さんの件です。正直言ってボクも世代じゃないから全然詳しくないんですけど、彼女は映画『マイ・バック・ページ』で忽那汐里が演じたヒロインのモデルでもあって、ところが森本レオさんとの共演作(永島慎二『若者たち』を原作とする1974年のNHKドラマ『黄色い涙』)を最後に22歳の若さで橋の上から電車に飛び込んで亡くなってるんですよね…。そして、ネット上では「遺体には妊娠の形跡があり、森本レオの性暴力が原因だ」という話がほぼ事実として語られているんですけど、これってネットで検索しても国会図書館のデータベースで検索しても一次情報が一切引っかからないんですよ。
70年代誌面にも存在しない「妊娠の兆候」 森本レオ悪評化が生んだネットの都市伝説
だから大宅壮一文庫に行って当時の死亡記事やその後の報道を全部当たってきたんですけど、はっきり言えるのは当時の死亡記事には妊娠の兆候なんて記述は一切出てこないんです。ご本人のご家庭の問題、要はお母さんが重病になったことによるノイローゼが原因だと報じられていて、Wikipediaにもそう書かれています。「そんなの当時のメディアが自粛してただけだ」って思う人もいそうですけど、70年代の芸能週刊誌なんてモラルも人権意識もゼロだから、そんなショッキングなことが明らかになったら報道するに決まってるんですよ。でも、そんなことは一切なかったし、亡くなって2週間もすると何の報道もなくなるんですよね。80年代になると『マイ・バック・ページ』の原作になった川本三郎の『SWITCH』の連載に彼女が登場しただけで、もちろんそこにもそんな記述はなかったわけです。
その後も彼女の記事は全然なかったのに、じゃあ、なんでいまこんなことになってるのか。今回の調査でわかったのは、死亡事故から何十年も経った後、最近になって噂系の雑誌に“たった1本だけ”そういう記事が出てたんですよね。おそらく、後年になって森本レオさんの女性関係の悪評が表面化したことで、「そうなると共演直後に自殺した彼女も被害者だったんじゃないか?」「そうに違いない、そうに決まった!」とネット上で決定的な事実として流されるようになって、それが噂として雑誌に一度だけ載ったってことなんだと思います。つまり、ほぼ確実にデマだったんですよ。
確かに森本レオさんはかなり真っ黒な人なんですけど、不確定な情報までどんどん拾って、それが真実であるかのように批判するのはちょっと雑すぎるし怖いなと。だって、当時のドラマの共演者の突然死って意味では、森本レオ初期の代表作でもある1971年の『好き! すき!! 魔女先生』主演の菊容子だって75年に殺されてますからね(交際相手による殺人事件)。でもまあ、確かに森本レオは真っ黒な人ではあるので、続いてその黒さについても検証してみようと思います。