知らない弁護士が親のお金を管理することも…認知症後に選択肢が減る「成年後見制度」の落とし穴
「家族の中で長男が後見人をやると決まったから、もう安心」――そう思っている人にこそ知ってほしい制度の”落とし穴”がある。
前回は、認知症によって預金や不動産がどのように「凍結」していくのか、司法書士の村山澄江氏に具体的な実例を交えて聞いた。今回は、その凍結を解くために使われる「成年後見制度」の詳しい仕組みと、現場で見えてきたデメリットについて聞く。全4回の第2回。
みんかぶプレミアム連載「取り返しのつかない相続」
「長男を後見人に」は確約できない。最終的に後見人を決めるのは家庭裁判所

村山澄江さんご提供資料
成年後見制度の「法定後見」とは、認知症などで判断能力が低下した後に家庭裁判所へ申し立てを行い、後見人を選任してもらう制度です。判断能力の程度によって「後見」「保佐」「補助」の3種類に分かれ、軽い段階になるほど代理権の範囲は限定され、大事な取引だけに代理権がつく形になります。※2026年6月の法改正で、施行後は種類が変更になります
この法定後見が使われるのは、認知症などで判断力がすでに低下している場合です。まだ元気なうちであれば、後述する任意後見という別の選択肢がありますが、判断力が低下してしまった後は、この法定後見しか選べません。
親が認知症になったあとに利用する制度なので、親族である息子や娘が「私が後見人になります」と手を挙げればいいのでは?と思った方も多いでしょう。しかし、親族が後見人に選ばれる可能性は100%ではない──ここに「法定後見」の落とし穴があります。
実際に親族が後見人に立候補した場合、その通りに選ばれる確率は8〜9割程度です。つまり、確実に親族が選ばれるとは限らないのです。なぜ親族が確実に選ばれるわけではないのかというと、最終決定をするのが家庭裁判所だからです。預金が多い家庭の場合、家庭裁判所としては、後見人が財産を横領しないように安全策を取るため、弁護士などの専門職を後見人として適任だと判断する場合があるのです。
東京家庭裁判所によると、流動資産(固定資産以外の預金等)が1,000万円を超えると「高額」と見なされ、これを超えると親族一人だけでは選ばれにくくなり、専門職の見監督人を職権でつけたり(このケースが比較的多くなる)、場合によっては第三者を後見人に選任することも。仮に家庭裁判所が弁護士などの専門職を後見人に選任した場合、『その人がどのような考えを持っている後見人なのか、実際に話してみるまで分からない』という不安も確実にあるのです。