「コロナ禍以上に深刻」 飲食業界を襲う“全方位コスト高”の実態

中東情勢の悪化により、さまざまな業界が深刻な状況を迎えているが、飲食業界はどうなのか。飲食業界はコロナ禍では「緊急事態宣言」などの影響により、大打撃を受けた業界と言える。今回の中東情勢の悪化には、どのような影響を受けているのか、フードジャーナリストの山路力也氏に話を聞いた。(聞き手・望月悠木)
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深刻度はコロナ禍以上
――まず中東情勢が悪化する以前の飲食業界は、どのような状況でしたか。
コロナ禍で飲食業界が大きなダメージを受けましたが、その後はインバウンド需要も戻り、外食産業全体としては売上が回復傾向にありました。都市部ではコロナ前に近い賑わいも戻り始めていて、「ようやく持ち直してきた」という空気はあったと思います。
その一方で、食材費、人件費、光熱費など、あらゆるコストが上がり続けているため、「売れているのに利益が残らない」という状況でもありました。飲食業はもともと利益率が高い業界ではありません。数%のコスト増でも経営への影響が大きいので、複数のコストが同時に上がるとかなり苦しくなります。
店によって差はありますが、業界全体を俯瞰すると、「売上は増えているのに利益は削られている」という感覚が強いです。表面的には回復しているように見えても、実際には無理をしながら営業を続けている店も多かったと思います。
── 今回の状況は、新型コロナウイルスをはじめとした過去の危機とはどう違いますか。
リーマンショックの時は景気悪化による需要減、東日本大震災では地域的な被害、コロナ禍では営業停止や外出自粛による需要の断絶でした。いずれも問題の原因が比較的わかりやすく、支援策も打ちやすかった。実際、コロナ禍では「持続化給付金」といった協力金に加え、実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」など、大規模な支援策がありました。
しかし、現在はもともと人件費や食材費が高騰していたところに、エネルギー価格や物流費も上がり、あらゆるコストが同時に上昇している状況です。さらには、消費者側も物価高で余裕がなくなっています。店側は値上げをしたいけれど、そうすれば客足が遠のく。その板挟みになっています。政府による目立った支援策も今回はなく、コロナ禍より深刻な状況だと考えています。