中東危機で輸入食材に「届かないリスク」 外食産業を救う地産地消という切り札

中東情勢の悪化により、さまざまな業界が深刻な打撃を受けているが、飲食業界の食材調達も例外ではない。政府が発表した令和6年度のカロリーベース食料自給率は38%と非常に低く、海外への依存度の高さがうかがえる。そして、現在輸送コストの高騰や供給リスクが顕在化する中、食材調達の在り方はどう変わるのか。フードジャーナリストの山路力也氏に話を聞いた。(聞き手・望月悠木)
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/attach/pdf/012-19.pdf
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「安いから輸入」は成り立たない?
――飲食業界はこれまで輸入食材に頼ってきましたが、現在はどのような変化が起きていますか。
これまで輸入食材を使う最大の理由は、やはりコストでした。国産より安く、それでいて大量かつ安定的に仕入れられる、というメリットがあったからです。飲食業界は薄利多売の世界ですから、「少しでも安く仕入れる」という考え方は飲食ビジネスの基本でした。
ただ、ウクライナとロシアの紛争、さらには今回の中東情勢の悪化によって、その前提が崩れ始めています。輸送コストの上昇により、輸入品と国産品の価格差が縮小し、場合によっては「これなら国産のほうが安いのでは?」というケースすら出てきています。
――やはり中東情勢の悪化によるインパクトは大きいのですね。
そうですね。ホルムズ海峡周辺の緊張が高まり、通常ルートを避けて迂回輸送を行うケースも増えました。ただ、その分、輸送日数が延びれば燃料費もかかりますし、冷凍・冷蔵輸送のコストも上がるため、物流コストはさらに押し上げられている状況です。
輸入食材に依存してきた外食産業にとっては、輸入に依存してきた外食産業にとっては、かなり深刻な問題と言えます。これまでの「多少輸送費がかかっても、海外のほうが圧倒的に安い」という“当たり前”が崩れ始めています。さらに現在は、単なるコストの問題だけではありません。世界情勢が不安定になるほど、輸入品は「届くかどうかわからない」というリスクも抱えるため、「商品を提供する」という大前提さえ揺らぎ始めています。
――現在、輸入が難しくなっている食材には、どのようなものがありますか。
中東情勢が悪化する以前から不安視されていましたが、うどんに使われる小麦が挙げられます。日本のうどん店の約9割が、オーストラリア産の「ASW」と呼ばれる、日本向け独自仕様の小麦銘柄を使用してきました。
これは単純に「安いから」という理由だけではありません。オーストラリア側が長年、日本のうどん文化に合わせて品種改良を行ってきた歴史があります。コシや粘り、滑らかさなど、日本人が好むうどんの食感に適した小麦として選ばれてきました。つまり、価格だけでなく品質面でも強みがあったわけです。
――その小麦が入ってこないとなると深刻ですね。
はい。干ばつや異常気象に加え、オーストラリア政府の農業政策の変化、生産コストの上昇などの影響で、ASWの安定調達は以前から難しくなっていました。そこに輸送コストの高騰も重なり、従来の価格では仕入れにくくなっています。
もちろん、国産小麦や北米産小麦への切り替えも検討されています。ただ、うどんは小麦の違いが食感や風味に直結するため、単純に置き換えればいいという話ではありません。“同じうどん”を維持すること自体が難しくなる可能性もあります。