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「アメリカ在住10年」でも不採用…最強属性・帰国子女の予後を台無しにする“日本社会への冷笑”と、それでも市場で無双し続ける者の生存戦略

 長らく日本の教育・キャリア市場において「最強のカード」とされてきた帰国子女という属性がいま、大きな転換点を迎えている。「英語さえできればどこへでも行ける」という成功体験の賞味期限が切れるなか、市場が彼らに突きつける新たな選別基準とは何か。単なる「語学力」を「ビジネス上の思考プロセス」へと昇華できる者と、特権性に安住して日本の就活ルールを冷笑する者ーー。学歴活動家・じゅそうけん氏が、入試実態と出口戦略の相関から、帰国子女たちが辿るキャリアの「予後」を冷徹に分析する。

 みんかぶプレミアム連載「コスパと予後から考える学歴論」

目次

「英語ができるだけ」では通用しない? 帰国子女枠の変容とJTCが評価する「適応力」の正体

「帰国子女はズルい」

 このような言説が、SNSを中心に散見される。英語ができる、異文化に慣れている、プレゼンが得意、そもそも実家が太いーーたしかに羨まれるような要素は多い。一方で、近年は大学側が帰国生枠を縮小・再編する動きも進み、「英語ができるだけ」では通用しにくい局面が増えているのもまた事実だ。そこで今回は、帰国子女の予後について考察していきたいと思う。

「英語力だけじゃなくて、環境への適応とか、しんどい環境を乗り越えてきた自信とか、やっぱり魅力的に映るよ」

 某JTCで新卒採用に関わる知人はこう語る。帰国子女が評価されやすいのは、単なる「英語力」だけではないのだという。多感な時期に、大きな環境変化に適応したという経験、異文化での学校生活やコミュニティ形成は、エピソードとしての説得力が高く、面接やESで「具体→抽象→再具体」の流れに乗せやすいのだとか。また、グローバル案件や海外拠点との協働を想定する企業にとって、言語以前に「異質な前提をすり合わせる力」は魅力的に映るだろう。

早慶の入試再編が示す「英語+α」の必須化。帰国生ブランドのコモディティ化と、語学力以外の生存条件

 この、英語力以外の優位性は近年の帰国生入試の流れにも如実に現れる。早稲田・慶應などで帰国生対象の入試が停止・再編されていく流れは、その象徴とも言えるだろう。今は帰国子女というだけでは珍しくなく、「英語ができるだけ」ではなく「英語+何か」があることではじめて優位性が出てくると考えられる。そして、その「+何か」を語りやすいのもまた、帰国子女の強さだ。

 一方で、一般入試において英語ができるというアドバンテージは当然大きい。例えば、仮に東京大学を受験するとして英語で120点中100点ほど獲得できるのであれば、理科Ⅲ類でもない限りはかなり合格確率は高まるだろう。受験科目が少なく、周囲のレベルで劣る有名私大であればより差をつける要素となる。このような事情もあり、「大学名」の部分で大きく失敗する学生はかなり少ない。ただし、英語の点数という優位性のみで大学受験を突破するのは、実は若干危険なルートだ。

海外経験は単なる“材料”に過ぎない。京大・早稲田の選考基準に見る、言語能力を超えた「抽象化能力」の比重

 後述するキャリア形成の「予後」を見据えた上で、2つの大学を例に、求められる能力を考えていく。

1.京都大学

 日本では東京大学に次ぐ偏差値を誇る京都大学。「帰国子女なら京大も特別枠で」というイメージは若干の誤解を含む。このルートは「英語一本で突破」というより、TOEFL等の英語資格に加えて、国語(現代文)を軸とした筆記・面接で日本語の論理力を見られる設計だと整理すると相違が少ないだろう(実際制度を確認すると、TOEFL iBT提出や国語(理系)相当の筆記、面接が中心)。

 要するに京大の帰国子女ルートは、「海外経験を持つ者の受け皿」というより、海外で育っていても京大水準の読解・思考を日本語で出せる人を拾い上げる制度に近い。ここで勝てる帰国子女は、のちのキャリアでも「言語をまたいだ抽象化能力」を武器にしやすい層だ。

2.早稲田大学

 早稲田大学は「帰国生・外国学生を対象とした入試」を学部単位で用意しており、たとえば政治経済学部には海外就学経験者を対象に、書類・英語能力・論文・面接などで多面的に測る意図が見える。また、2025年からは帰国生入学試験による複数学部共通の募集を停止へと移行した。

 この変化が意味するのは、「帰国子女だから有利」ではなく、学部が求める人物像に合うかへと評価基準が変わったということ。近年の総合型選抜増加の流れからも言えるが、さまざまな要素をもって評価をする流れはここでも表れている。帰国生という「属性」ではなく「履歴の材料」として用い、その先は論文・面接で学術的関心や社会認識、表現の筋の良さを評価する形になっていると言えるだろう。

 上記のような関門を突破した帰国子女たちは、大学での4年間を経て一体どのように社会に出ていくのか。大学4年間で何を学ぶか、何を経験するかによっても当然志望業界に変化はあるが、やはり帰国子女人気が集まりやすいのは、

・外資系(金融・コンサル)

・総合商社、専門商社

・メーカー営業

・その他グローバル企業

 といった企業だ。もちろん社格や待遇の観点もあるが、「経験と紐づけてなんの課題解決をするか」という観点に立った時に、やはり海外との繋がりは意識するところなのだろう。

ただ、新卒就活は英語さえできればなんとかなる類のものではなく、むしろ「英語ができるだけ」の人にとっては大学受験より厳しいだろう。

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この記事の著者
じゅそうけん

ネット上で暗躍する学歴活動家。 「受験情報×エンターテインメント」をモットーにX(旧Twitter)やYouTube上で受験ネタを面白おかしく取り上げる。 2021年に大手金融機関を退職し、人生をかけて学歴と向き合うことを決意。国内のみならず海外の受験事情も勉強中。 株式会社JSK代表。XをはじめとするSNSコンサルティングサービスを展開。 著者に『中学受験 子どもの人生を本気で考えた受験校選び戦略』(KADOKAWA)、『中学受験はやめなさい 高校受験のすすめ』(実業之日本社)がある。 本名は伊藤滉一郎。

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