なぜ東大・早慶卒でも“転落”するのか…「深夜の連絡」「理不尽な修正」「体育会ノリ」でエリートコースから脱落していく“転落高学歴”たち
外資系金融、戦略コンサル、総合商社——高学歴層が新卒カードを切る際、こうしたハイキャリア業界を目指すのは極めて合理的な選択に見える。しかし、ペーパーテストやケース面接を突破できたとしても、入社後に待ち受ける実務の負荷や対人摩擦に耐えられるかは別問題だ。選考の通過可能性ではなく、「入社後に支払う摩耗コスト」の観点からキャリアをどう設計すべきか。受験評論家・じゅそうけん氏が、コミュ力や体力に自信のない高学歴層が直面する現実と、心身を壊さずに市場価値を維持するための生き残り術を解説する。
みんかぶプレミアム連載「コスパと予後から考える学歴論」
「入れるか」ではなく「生き残れるか」。ハイキャリア業界で問われる選考突破率と摩耗コストのギャップ
コミュ力、体力に自信がない高学歴は、ハイキャリアを目指す際について行けないリスクをどう考えるべきか。
高学歴であれば、外資系金融機関、戦略コンサル、総合商社といった、いわゆるハイキャリア業界を一度は意識する人が多い。東大、京大、一橋、早慶、旧帝大といった学歴を持っていると、周囲も本人も「せっかくここまで来たのだから、最初の就職先はできるだけ上を狙うべきだ」と考えがちである。
実際、こうした業界は給与水準、社会的評価、転職市場でのブランド力のいずれも高い。
新卒カードを最大限に使うという意味では、極めて合理的な選択に見える。しかし問題は、そのゲームに自分の身体と性格がついて行けるかどうかである。近年の私の連載でも、「学歴だけでは逃げ切れない」「東大・早慶でも予後不良に陥る」といった論点を繰り返し扱ってきた。
その中では、高学歴者の進路選択を「入れるか」ではなく「入った後に予後良く生きられるか」で見る視点で論を進めてきた。そこで今回は、特にコミュニケーション能力や体力に自信がない高学歴層とっての「ハイキャリア業界を目指す」ということを、単なる選考突破可能性ではなく、入社後の摩耗コストを見積りながら、考えていきたいと思う。
学歴や地頭は単なる入場券。ハイキャリア3業界で問われる「頭の良さ」以外の総合力
外資系金融機関、コンサル、総合商社に共通するのは、頭の良さだけでは不十分だという点である。もちろん、学歴や地頭は入場券として大きな意味を持つ。東大・京大・早慶以上の学生が外資コンサル就職で大きな存在感を持つというのは間違いない事実だ。
特にコンサルなどでは、「思考筋の良さ」を見ている節は間違いなくある。しかし、入社後に求められる能力は、受験勉強で鍛えた処理能力とはかなり異なる。外資系金融であれば、長時間労働、緊張感の高い数字、詰められる文化、英語でのやり取り、クライアントや上司への即応性がある。コンサルであれば、短期間で未知の業界を理解し、仮説を立て、資料を作り、クライアントの前で説明し、チーム内で立ち回る必要がある。総合商社であれば、社内外の調整、飲み会や人間関係、海外駐在、現場対応、泥臭い交渉も避けて通れない。
つまり、これらの業界は「賢い人が静かに座って難問を解く場所」ではない。むしろ、賢さを前提に、体力、愛嬌、打たれ強さ、巻き込み力、根回し力、上司や顧客に可愛がられる力を総合的に問われる場所である。また、目まぐるしく変化を続ける案件に対して適応し、成果を残し続けるという意味では、努力の持久走といった側面もあるだろう。
「使われる側」の若手に逃げ場なし。理不尽や雑な人間関係に弱い高学歴層の苦悩
受験エリートの中には、ペーパーテストでは圧倒的に強いが、曖昧な指示、理不尽な修正、深夜の連絡、雑な人間関係、体育会的な空気に弱い人がいる。そうした人が「自分は高学歴だから外銀・コンサル・商社に行くべきだ」と考えると、入社後に大きなギャップに直面する。
ここで厄介なのは、コミュ力や体力に自信がない人ほど、就活時点では自分の弱点を過小評価しがちだということである。大学受験では、苦手な人間関係を避けて机に向かうことで勝てた。孤独に耐える能力、長時間の自習、暗記と演習の積み上げは、むしろ強みになった。そして、就活においては強みをアピールする場であるため、表裏一体の弱みは隠し、うまく立ち振る舞い、評価を得るのが最適解とされる。しかし、会社員としてのハイキャリアでは、孤独に耐える力よりも、他人と摩擦しながら成果を出す力が問われる。
さらに、若手のうちは逃げ場が少ない。外資金融のアナリスト、コンサルのアソシエイト、商社の若手総合職は、基本的には「使われる側」である。上から降ってくる仕事を処理し、期待値を超え、なおかつ周囲に好かれなければならない。この点で、弱みにうまく向き合うことができないと、入ってからのミスマッチに苛まれることになる。
もちろん、コミュ力や体力に自信がないからといって、ハイキャリアを諦めるべきだという話ではない。高学歴者の中には、自己評価が低いだけで、実際には十分に戦える人もいる。内向的であっても、論理的説明能力が高く、誠実に仕事を返し、専門性を磨ける人はコンサルや金融でも評価される。