「100人の努力の1%から稼ぐ」ロックフェラーの思想を継承したビッグテックの冷徹な“収益モデル”

19世紀後半に米国の石油市場の90%を支配したジョン・D・ロックフェラー。彼の「巨大トラストによる市場統治」の思想とインフラ封鎖の手法は、現代のシリコンバレーを牽引するビッグテックの戦略と驚くほど一致している。扱う商品が石油からデータへと変わっても、資本主義における「独占の勝利方程式」の本質は不変と言える。元『プレジデント』編集長で作家の小倉健一氏が、時代を超えて繰り返される独占システムの構造と、競争が完全に消滅した市場が向かう未来をひもとく。
みんかぶプレミアム連載「一握りの大富豪だけが知っている世界の真実」
目次
なぜ汗水流して働いても豊かになれないのか。石油王が見つめた富の構造
毎日を懸命に生きる一般市民の多くは、朝早くから満員電車に揺られ、夜遅くまで会社のデスクに向かい、自ら汗水流して肉体をすり減らしながら長時間働くことこそが富を築き上げる唯一の正しい道であると深く信じ込まされている。
幼い頃から受けてきた教育の過程や社会の道徳規範において、勤勉さは絶対的な美徳として教え込まれてきた。一生懸命に働き、新しいスキルを磨き続け、与えられた目の前の仕事に全力で取り組む。自分が生み出した労働の価値の分だけ、いつか必ず正当な報酬が支払われ、経済的に豊かになれるという美しい物語を疑う者はほとんどいない。
しかし、歴史上最も巨大な富を築き上げた石油王、ジョン・D・ロックフェラーが見つめていた富の構造は、一般的な労働の概念とは全く次元が異なっていた。ロックフェラーは、資本主義という果てしなく広がる巨大なゲーム盤の上で、個人の力がいかにちっぽけで限界のあるものかを完全に理解していたのである。
「100人の努力の1%から稼ぐ」ロックフェラーが追求したシステム思考の本質
ロックフェラーのシステム思考を如実に表す、あまりにも有名な言葉が残されている。
「自分の100%の努力から稼ぐよりも、100人の努力の1%から稼ぐほうがよい」
個人の肉体や時間には、1日24時間という絶対に越えられない物理的な限界が存在する。どれほど優秀で体力に恵まれた人間であっても、一人で精製できる石油の量には限りがある。眠る時間を削り、自らの100%の力で狂ったように働き続けたとしても、得られる富は単なる足し算に過ぎず、決して天文学的な数字へと膨れ上がることはない。万が一病気や怪我で働く手を止めてしまえば、収入は一瞬にして完全に途絶えてしまう。
頂点に立つ富裕層は、自らの手を汚して泥まみれになることを早々に放棄する。
労働の足し算から抜け出し、他人の時間、他人の才能、そして他人の労働力をレバレッジとして利用するための、巨大で精密なシステムを構築するのである。100人の労働者がそれぞれ懸命に働き、生み出した果実のほんの1%ずつを静かに吸い上げる。仕組みさえ一度作り上げてしまえば、労働者が1万人、100万人に増えた時、富の増殖は足し算から掛け算へと劇的に変化する。
システムを所有する者の口座には寝ている間にも無限に等しい利益が自動的に流れ込み続ける。資本主義において莫大な富を築くための鍵は、懸命に働くことではなく、他者の労働を効率的に抽出する完璧なポンプを設計することなのだ。