「親が元気なうちに」が最後のチャンス。認知症で実家を3年間売れなかった家族の後悔
「息子や娘が親のキャッシュカードの暗証番号を把握して、親に何かあったときのために備えている」――相続に備えている家族にとって、これは当たり前の光景かもしれない。しかし、その「当たり前」がある日突然、通用しなくなる瞬間が来ることを知っているだろうか。
司法書士の村山澄江氏は、2003年の司法書士登録以来22年にわたり、高齢者家族のサポート、とりわけ認知症対策と相続対策の分野に力を入れてきた。これまで手がけた成年後見開始の申し立ては300件超、自身が成年後見人として関わった人数も50人を超える。著書『認知症に備える』も持ち、専門知識を一般向けにかみ砕いて伝えることを得意としている。
本稿では、まず親が認知症になった瞬間に何が起こるのか、そのリアルな”資産凍結”の実態から聞く。全4回の第1回。
みんかぶプレミアム連載「取り返しのつかない相続」
相談は「親の物忘れ」から始まる。後見申し立て300件超の司法書士が見てきた認知症対策の現場
私は司法書士として「介護や相続の『まさか』をなくす」お手伝いをしたいと思っています。特に力を入れているのは高齢者家族のサポート、その中でも認知症対策と相続対策です。認知症対策をしながら、最後は相続という出口まで伴走する。いわば予防医療のような立ち位置で仕事をしています。
私は「成年後見制度(判断能力が十分でない人の生活や財産を、法律面から支える制度)」のご依頼を多く受け、申し立て件数は300件を超え、自分自身が後見人として関わった人数も50人を超えました。
日頃多い相談は、親が70歳を超えて物忘れが出てきて不安、というものから、すでに認知症の症状が進み「銀行から後見人をつけてください」と言われて相談にきました、という内容まで、幅広くあります。また、誰に相談すればいいか分からないまま困っているケースも多いです。
相談の多くは、不動産が絡みます。たとえば「実家をどうするか。親が住まなくなったら誰が住むの?売るの?」という話です。不動産の相続は、お近くの司法書士にご相談ください。そして気になることがあれば「あの時にこうしておけばよかった」という後悔をなくすため、気軽に相談してほしいと思っています。