PER10倍でも割高、30倍でも割安になる? 10億円投資家が見抜く“本当の出遅れ株”
PERやPBRが低く、株価も出遅れている。そんな銘柄は一見、割安に見える。ただ、安い株がそのまま「買い」とは限らない。
市場に見過ごされているのか、それとも評価されないだけの理由があるのか。出遅れ株を選ぶなら、その違いを見極めたい。
そこで今回は、2000年代前半から株式投資を続け、10億円の資産を築いた個人投資家・DAIBOUCHOU氏に、銘柄選びで見るポイントを伺った。インタビュー連載全2回の第1回。
低PERだけでは見抜けない「本当の出遅れ株」
ーー出遅れ株を探すなら、まずは低PERの銘柄から当たるのが定石ではないでしょうか。
入り口としてはそれで構いません。PERが低ければ市場の期待はさほど高くないと考えられますし、株価が下がり続けている会社も、期待されていない銘柄と見ることはできます。
最近は、AIを使って「SOTP分析(※)」をすることもあります。
※ 複数の事業を持つ企業について、事業ごとの価値をそれぞれ算出し、合計して企業全体の価値を評価する方法。
複数の事業を持つ会社なら、事業ごとの価値を見積もって合計し、それを現在の時価総額と比べます。そこで大きな差があれば、「会社全体では割安に評価されているのではないか」と考えられます。
成長している事業が、低収益の本業に埋もれて評価されていないケースもあります。問うべきはPERの高低より、企業本来の価値に比べて株価が安いかどうかです。
ーーとはいえ、個人投資家がそこまで調べるのは大変です。PERが低ければ十分では?
低PERでも、借金を膨らませてレバレッジをかけた結果、利益が大きく見えている会社があります。数字の上では安くても、事業の質が高いとは限りません。
PBRも同様です。多額の借金を抱え、返済したら資産がほとんど残らない会社なら、PBRが低くても「資産に対して株価が安い」とは言い切れないでしょう。
株価の下落にしても、市場が何かを心配しているサインかもしれない。成長の鈍化、過大な負債、キャッシュが残らない体質…。その懸念が妥当なのか、売られすぎなのかを調べて、ようやく割安かどうかが判断できます。
なぜ「増益企業」でも安心できないのか
ーー最近は増益を続ける企業も多いです。利益が伸びていれば安心して買えるのではないしょうか。
私が見るのは利益の額より、最終的に自由に使える現金が残るかどうかです。会計上は利益が出ていても、そのお金が仕入れや在庫に吸い込まれていく会社があります。
帳簿上は黒字なのに、手元のキャッシュは増えない。これでは配当や自社株買いにも回しにくいですよね。
理想は、事業を回すのに多額の資金を必要とせず、高い利益を稼げる会社。借金にも在庫にも頼らず、固定費も軽い。それでもお金を生み続ける「キャッシュカウ」のような事業は強いです。
ーーそうした会社は、決算書のどこを見れば見分けられますか。
キャッシュフロー計算書を見るのが近道です。本業で稼いだ営業キャッシュフローから、事業の維持に必要な投資を差し引いて、どれだけお金が残っているか。
利益は増えているのにこの金額が伸びていなければ、どこかでお金が吸い取られてしまいます。
ーー在庫が増えるのは売れ行きが好調な証拠とも言えそうですが、どうでしょうか。
在庫の増加そのものが悪いとは限りません。ただ、稼いだ利益がそのまま在庫に化けているなら、会社が自由に使えるお金は増えていない。
売上の伸びを上回るペースで在庫が膨らんでいるなら、売れ残りを抱え始めているサインとも受け取れます。
増配も、自社株買いも、新規事業への投資も、選択肢を持てるのはキャッシュが残る会社です。利益の額に加えて、「稼いだお金がどこへ消えたのか」までたどってみてください。