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不動産「ババ抜き時代」が始まった! 買うべき家・避けるべき家の“分岐点”

(c) AdobeStock

「売れない、貸せない、しかし所有しているかぎり管理費も固定資産税も払い続けなければならない。それが『負動産』です。今後、相続を通じてこの『負動産』を抱える人が一気に増えていきます」

 不動産事業プロデューサーの牧野知弘氏は、そう警鐘を鳴らす。団塊世代の後期高齢者入りで、日本はこれから「大相続時代」に突入する。中古不動産が一斉に市場に放出される「大相続時代」、本当に「資産」になる不動産の条件とは何か。

 買うべき不動産、相続すべき不動産と、そうでないものの分岐点はどこにあるのか。連載全3回の第1回。

目次

2030年以降、不動産の需給バランスが崩れる

 これから日本は、本格的な大相続時代に突入します。約800万人もの人口がいる団塊世代が、2024年に全員後期高齢者入りしました。この世代が亡くなっていけば、不動産相続が一斉に発生することが予想されます。

 人口が最も多い世代から、その下の現役世代へと、大量の不動産が相続という形で供給され続けることで、これまでになかったさまざまな問題が発生することが考えられます。

 社会全体で見れば、住宅の需給関係が大きく崩れます。空き家が地方から都市部にまで広がり、地域の景観や治安、不動産価格そのものを揺るがしていきます。

 個人の視点で見ても、すでに家を持っている人にとっては住宅がダブつくことになる。親の家を相続しても売却や賃貸に出すしかないけれども、買い手も借り手もすぐには見つからない。そういう課題が、誰の身にも起こりうるのです。

「自分はもう家を買ったから不動産相場は関係ない」「親のマンションは売れば済む」「相続するような家や土地はない」ーーそう考える人もいらっしゃるかもしれません。

 しかし、現実はそう単純ではありません。

 おじ・おばに子供がいなければ、相続は兄弟姉妹に回り、さらにその先の甥や姪のもとへとたどり着く。「自分には関係ない」と思っていた人のもとに、ある日突然、見知らぬ土地のマンションや地方の戸建ての権利が舞い込んでくるーーそんな事例が、これから珍しくなくなっていきます。

相続すると毎月数十万円のマイナスも

 相続で不動産の権利が手に入った。その瞬間、多くの人がまずは「購入すれば数千万円もかかる資産がタダで手に入った」と喜ぶはずです。しかし、相続する不動産が「資産」とは限りません。むしろ、あなたからお金を奪っていく「負動産」かもしれません。

「負動産」とは、買い手も借り手もつかない不動産のこと。所有しているだけで管理費・修繕積立金・固定資産税が容赦なく発生し続け、資産ではなく負債として家計を圧迫します。

 引き継いだ不動産が「負動産」だった場合、いったい何が起こるのか。具体的にイメージしておくことが、何より大切です。

 たとえば、地方や郊外のマンションを相続したとします。自分はそこに住む予定はない。売ろうとしても、買い手がつかない。貸そうとしても、借り手がいない。それでも所有している限り、管理費と修繕積立金は毎月容赦なく請求され、固定資産税もかかる。築年数の経ったマンションほど、修繕積立金は段階的に値上がりしていく仕組みになっているケースが多く、相続した時点で月数万円の負担が当たり前に発生します。住んでもいない、使ってもいない部屋に、年間で数十万円規模のお金が流れ続けることになるのです。

 こうした事態は、地方や郊外だけの話ではありません。東京・大阪・名古屋といった大都市圏でも買い手や借り手がつかない「負動産」は確実に広がっています。

 固定資産税や管理費、修繕積立金を少しでもカバーしようと、相場より大幅に安い家賃で貸し出すケースも出てきます。しかも、こうした状況に陥っている所有者は、たいてい同じマンション内に複数いるものです。一部屋が値下げに踏み切れば、他の部屋も追随する。マンション全体の家賃相場がじりじりと下がり、もはや下げても埋まらない部屋が出てくる。

 家賃が下がれば、入居者の質も変わります。借り手を選んでいる余裕はありませんから、これまでなら審査で弾かれていたような住人が入ってくる。騒音やゴミ出しのトラブルが増え、住環境が悪化する。耐えかねた元の住人が出ていけば、空室がさらに増え、家賃はさらに下がる。マンション全体の資産価値は、ますます下がっていく。負のスパイラルです。

 さらに状況を悪化させるのが、兄弟姉妹で共有のまま相続してしまったケースです。一つの不動産に複数の所有者がいると、売却にも賃貸にも修繕にも、全員の合意(軽微な変更は過半数の同意)が必要になります。マンション全体の合意形成ですら難しいのに、まず身内の合意形成で行き詰まる。永久に話がまとまらない、という事例はいくらでもあります。

「ならば相続放棄すればいい」と思われるかもしれません。ですが、相続放棄は現預金や他の資産も含めてすべてを放棄することになるため、簡単には決断できません。負動産だけを切り離して捨てることは、できないのです。

 現金や株であれば、相続したその瞬間から、すぐに使うことも、売って現金化することも、運用に回すこともできます。しかし不動産は違います。「相続したあとどうするか」という出口戦略を、相続が発生する前から考えておく必要があるのです。

「不動産を相続できてラッキー」どころか、「相続したせいで一生お金を払い続ける」ことにならないよう、事前の下調べが非常に重要です。

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この記事の著者
牧野知弘

不動産事業プロデューサー。東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現・みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て三井不動産勤務。J-REIT(不動産投資信託)執行役員、運用会社代表取締役を経て、2015年にオラガ総研株式会社の代表取締役に就任。ホテルなどの不動産事業プロデュースを展開している。著書に『なぜマンションは高騰しているのか』(祥伝社新書)、『50歳からの不動産』(中公新書ラクレ)など多数。

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