不動産「ババ抜き時代」が始まった! それでもプロが「これから10年が絶好の買い場だ」と見るワケ

「売れない、貸せない、しかし所有しているかぎり管理費も固定資産税も払い続けなければならない。それが『負動産』です。今後、相続を通じてこの『負動産』を抱える人が一気に増えていきます」
不動産事業プロデューサーの牧野知弘氏は、そう警鐘を鳴らす。団塊世代の後期高齢者入りで、日本はこれから「大相続時代」に突入する。中古不動産が一斉に市場に放出される「大相続時代」、本当に「資産」になる不動産の条件とは何か。
買うべき不動産、相続すべき不動産と、そうでないものの分岐点はどこにあるのか。連載全3回の最終回。
目次
最大の悩みは、都心マンションの価格高騰
これから自分で家を買おうとする人にとって、いま最大の悩みは、都心マンションの価格高騰でしょう。高すぎて、普通の会社員にはもう手が届かない。「もう、まともな家は買えないのか」と思われるかもしれません。
ですが、悲観する必要はありません。むしろ、これから訪れる大相続時代は、買い手にとって大きなチャンスにもなりうるのです。
大量の相続が起こるということは、大量の不動産が市場に出てくるということでもあります。しかもそれは、負動産化する郊外や地方だけの話ではありません。誰もが欲しがる人気エリアでも、相続物件が次々と売りに出されてくる。
たとえば、いまは手が届かない世田谷区の戸建て。こうした憧れのエリアの物件であっても、相続した人が「住む予定もないし、早く現金化したい」と売りに出すケースが、これから増えていきます。売り急ぐ人が増えれば、価格は当然下がりやすくなる。これまで高嶺の花だった物件が、意外なほどリーズナブルに手に入る可能性が出てくるのです。
いま焦って高値で掴みにいく必要はありません。欲しいエリアを定めて、淡々と売り物が出てくるのを待つ。それも一つの賢い戦略です。大相続時代は、見方を変えれば、買い手にとっての好機なのです。
杉並、練馬、立川、所沢がなぜ狙い目か
では、その買い場が訪れたとき、いったいどんな物件を選べばよいのか。答えはシンプルです。これまでお話ししてきた「負動産化するエリア」の、ちょうど裏返しです。
人口の入れ替わりが活発で、街として代々受け継がれてきた「歴史の刻まれた町」。世田谷、大田、杉並、練馬、板橋といった東京の古くからの戸建て住宅地は、その典型です。こうした街は、住民が入れ替わりながらも、新しい家族が次々と入ってくる。だから不動産も売り買いされ続け、価格が下がりにくい。二世代目、三世代目と住み継がれていく街は、最終的に生き残る街でもあります。
また、首都圏郊外の中核都市も魅力的な選択肢です。千葉の流山、埼玉の所沢や川越、神奈川の海老名や藤沢、茅ヶ崎。東京の立川など、これまで「ちょっと遠いかな」と敬遠されていたエリアが、いま再評価されています。
こうした街は、子育て世代の流入で人口が増え、新しい商業施設の進出も相次いでいます。街としてのインフラもしっかり整備されており、暮らしやすさと価格のバランスは非常に良好です。
毎日かならず都心に通う必要がない人、リモートワークが中心の人にとっては、こうしたエリアは有力な選択肢になります。
「使用価値」と「投資視点」を混ぜてはいけない
買う場所と買い方を整えても、家を買う際にもう一つ、絶対に注意してほしいことがあります。家には、まったく異なる二つの価値が混在しているという事実です。
一つは、そこに住んで暮らすという「使用価値」。もう一つは、値上がりを期待して持つという「投資視点」での価値です。問題は、本来は住むために買うはずの実需の人が、この投資視点を混ぜ込んでしまうことです。
私自身、長く不動産の世界に身を置いてきましたが、自分の家を投資対象として見たことは、ただの一度もありません。いま住んでいる家は人気のエリアにあって30年近く暮らしていますが、その間、一度たりとも査定に出したことすらない。いくらで売れるのか、値上がりしたのか値下がりしたのか、まったく気にしていないのです。
仮に自宅に大きな含み益が出たとして、それを実現しようと売れば、自分は住む場所を失います。その含み益で同じエリアにもう一度家を買おうとしても、周りも同じように値上がりしているのですから、結局は買い替えられない。同じ地域で住み替えることは、まずできないのです。自宅の値上がり益などというものに、いったいどれほどの意味があるでしょうか。