中国は「次の覇権国」にはなれない……国際社会の新たな秩序の在り方を考える
アメリカの覇権が揺らいでいる中、中国は次の覇権国家となりえるのか。そんな問いに対し、東京大学公共政策大学院教授で地経学研究所長の鈴木一人氏は、否定的な見方を示す。混迷する世界情勢の先に、どのような秩序が現れるのか。鈴木氏が解説する。
みんかぶプレミアム連載「鈴木一人 地政学×経済安全保障=地経学」
中国はアメリカに代わる覇権国家になれない
アメリカの覇権が衰退しているという話をすると、必ず出てくるのが「では中国が次の覇権国となるのか」という問いです。
経済力や軍事力だけを見れば、確かに中国にはそのポテンシャルがあります。しかし、中国がアメリカに代わる形で世界の覇権を握る可能性は、それほど高くないと考えます。
そもそも中国は、「台湾」といえばどの国でも噛みつくような、非常に狭隘な自己利益や、自分たちの正当性を主張する側面があります。
戦後のアメリカは、実際にどこまで守ったかは別として、「民主主義」「人権」「自由貿易」といった、少なくとも建前としてはどの国にも当てはまる価値を掲げ、共産主義との戦いという大義のもとにベトナムに兵を派遣しました。
一方、中国が強調するのは「中国の夢」や「中華民族の偉大なる復興」といった中国ファーストの価値観であり、世界に通用する普遍的な価値を共有しようとはしません。
覇権国家には、軍事力や経済力だけでなく、「この国が作る秩序の中にいた方が自分たちにも利益がある」と他国に思わせる力が必要ですが、中国にはその力が備わっているとは言えません。
歴代の覇権国は「海洋国家」
もう一つ、中国を考えるうえで重要なのは、この国が非常に大陸国家的な性格を持つということです。歴史を振り返ると、スペイン、ポルトガル、オランダ、イギリス、そしてアメリカなど、世界的な覇権を握ってきた国の多くは海洋国家でした。
海洋国家は、海を越えて離れた地域に拠点を持ち、貿易や軍事力を通じて広い地域に影響力を及ぼします。
対して大陸国家は、自国の周辺に対する安全保障上の関心が非常に強い。中国も北京を中心に、いわば同心円状に影響力を広げてきた国家です。新疆やチベットから、台湾、南シナ海、尖閣諸島へと、基本的に自国の周辺へと関心を広げていきます。
確かに中国は、遠く離れた地域にも経済的な影響力を持っています。しかし、それはかつてのイギリスのように、世界各地を政治的に支配することとはかなり性格が違います。
つまり中国は、「世界全体を中国中心の秩序に作り替えたい」というより、まず自国周辺で圧倒的な存在になろうとする国家だと見るほうが理解しやすいと言えます。
なお、日本にとっては、中国のすぐ隣にいることが大きな問題です。大陸国家の隣国である以上、中国の膨張圧力と無関係ではいられないからです。