注文殺到の裏でメンタル崩壊。限界を迎えた元パート主婦が、年商3,000万円の壁を突破して利益を跳ね上げた「ある決断」

「売上さえ伸ばせば、フリーランスは安泰になれる」――そんなイメージを前に、「稼げるようになりさえすれば、悩みは消えるはずだ」と信じてはいないだろうか。前回のインタビューで、爆発的ヒットによって初年度売上約1,500万円を叩き出した軌跡を明かしてくれた「みぃ」氏も、成功の裏側では「もう、やめたい」と深夜に一人涙をこぼした一人だった。
しかし同氏は、量をこなして疲弊する働き方が自分もブランドもお客様も不幸にすると気づき、「安売り競争から降りて、価格ではなく価値で勝負する」という明確な軸へと舵を切っていく。
全4回の第3回となる本稿では、同氏が年商3,000万円を突破して覚悟の法人化を果たし、40年近い洋裁経験を持つ母親との「家族経営」で品質を守り抜いた決断を激白。さらに、大量の在庫を抱えたぬいぐるみの失敗から得た「流行を追うことの危うさ」という教訓と、深夜のクレーム対応に擦り切れた末にたどり着いた「値段を下げるな、価値を上げろ」という再現性の高いブランド戦略の全貌を、余すところなく語っていただいた。
みんかぶプレミアム連載「フリーランスの稼ぎ方大全」
目次
年商3,000万円を超え、覚悟の法人化へ。母の協力も得て「家族で会社を経営する」決断
クリスマスタペストリーの大ヒット以降も、私のブランドは成長を続けました。初年度に約1,500万円だった売上は、2年目、3年目には3,000万円を超えるまでに拡大していったのです。
売上が上がると、当然ながら納税額も大きくなります。税理士さんからの「法人化した方が税務上のメリットも大きいですし、これから新しい事業を展開する上でも社会的信用に繋がりますよ」というアドバイスもあり、私は法人化を決断しました。
正直、私には経営のノウハウなんてまったくありませんでしたし、法人化するのは怖さしかありませんでした。それでも「現状に満足せず、自分の限界までチャレンジしてみたい。覚悟を決めて勝負に出よう」と、次のステージに進むことを選んだのです。
法人化に伴い、製造体制も独自の強みを確立していきました。売上が拡大すると、多くの企業は外部の工場へ外注(アウトソーシング)を考えますが、私はあえて、40年近く洋裁の経験がある母親と一緒に商品を作ることを決め、身内で品質をコントロールする体制にこだわりました。
なぜなら、1ミリ単位の細かい修正や、商品の仕上がりに込める「熱量」というのは、外部の業者にはどうしても引き継げないからです。身内だからこそ遠慮なく「もっとここをこうしてほしい」と言い合えますし、同じマインドで、愛情を込めて質の高いモノづくりを維持することができます。
ただ、フリーランスから「経営者」になったことで、私自身のマインドはよりストイックに変化しました。フリーランスの頃は、極端な話、売れなくても「今回は失敗しちゃったね」で済みますし、在庫もそこまで多く抱えていませんでした。しかし会社になった今は、私が判断を誤ると、会社の存続が脅かされてしまいます。
「自分の好きな世界観」を表現する楽しさは残しつつも、それ以上に「会社を守るために、より確実に利益を出し、確実に売れる商品を戦略的に作り続けなければならない」というプレッシャーと日々戦っています。
大量の在庫を抱えてしまった失敗。「流行しているものを出せば売れるわけじゃない」と痛感した出来事
どんなに順調に見えるビジネスであっても、すべてが打率10割で進むわけではありません。私もこれまで、数え切れないほどの失敗と「やっちまった!」という苦い経験を積み重ねてきました。
特に強く記憶に残っているのは、ある程度ブランドの年数が経ち、売上が安定してきた頃に起こした「新商品開発でのミスマッチ」です。
当時、子ども向けの「ぬいぐるみ」が大きなトレンドになっていました。「今これが流行っているから、うちでも可愛いぬいぐるみを作れば絶対に売れるはず!」そう意気込んで、市場の波に乗るようにして新しいぬいぐるみの企画を立ち上げ、在庫をしっかりと積んで販売に踏み切ったのです。
ところが、蓋を開けてみると驚くほど売れませんでした。「売れなかった……」と、目の前に残された大量の在庫の山を前に、呆然とするしかありませんでした。
この手痛い失敗から学んだのは、「世間で流行っているからといって、うちのお客様が私にそれを求めているとは限らない」という、ビジネスにおける教訓でした。
長くブランドを続けていくと、ありがたいことにお客様の中に「みぃさんのブランドはこういうテイスト」という世界観やイメージが出来上がってきます。その確立された世界観がある中で、ただ「流行っているから」という理由だけで毛色の違う商品を投入しても、既存のファンのお客様との間にミスマッチが起きてしまうのです。
時代を読むというのは、本当に一筋縄ではいきません。投入するタイミングがほんの少し早すぎても遅すぎても形になりませんし、他社と同じものをそのまま右から左へ仕入れてきても、価格競争に巻き込まれて絶対に埋もれてしまいます。
「一度大きく売れたからといって、来年も同じように安泰である保証なんてどこにもない」。
このぬいぐるみの失敗は、トレンドをただ追うことの危うさと、自分のブランドがお客様から「何のために必要とされているのか」を常にシビアに見極め、自分色に正しく料理して届けることの重要性を、身をもって教えてくれた貴重な経験となりました。